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第10話
押し倒されたまま、俺も酒にやられたせいか強く抵抗する力もなくて、呆然としてしまった。
最近の子ってこうなの?
好きではない言い方なのに、そればかりが頭の中で反芻する。
その時、ドア付近でカチャン!と音がした。ハッとしてドアを見る。
5分経過した証だった。
……もうこれは、腹をくくれってことなのか。
密室となった部屋で男に迫られるシチュエーション。一回経験あるから我ながら物分かりがいい。
据え膳がどうのこうの思ってたのは自分なんだけど、据え膳のポジションやるつもりはこれっぽっちもなかったのに。
「相手してって簡単に言うけどな、女と勝手が違うんだぞ」
最後の抵抗みたいに言う。
「わかる!そりゃわかってるっすよ、兄さんは男だもんね!」
「すっげぇバカみたいお前の言い方」
全部振り切って逃げることはできる。
だけどここまでお膳立てされると、逃げたところですぐに元に戻されてしまうような気がする。
「わかった、じゃあもう好きにしろ」
白旗をあげて腹をくくってしまうに限る。
数年前の記憶を辿った。あの時は経験豊かな相手だったけど、今回はバカな童貞か。
「えっ、マジッすか!マジでいいの?」
目を輝かせながら何度も聞いてくるから、不安でしょうがない。
俺だってさすがに、童貞の男のフォロー出来るほど知識も経験もない。
「じゃあすんません、早速……」
そのまま首筋にかぶりついて来そうだったから、デコッパチを手の平で思いっきり押さえつけて離した。
「痛ってぇって!」
「ただし条件がある。俺がやめろって言ったことは絶対やんなよ」
それだけは先に約束させとかないと、何を無茶されるかわかったもんじゃない。
「当たり前じゃないっすかあ!やんないやんない!」
目をらんらんとさせてる時点であんまり効果ないかもしれないけど、これを盾にして、無茶なことされたらぶん殴って帰ってやろうと思った。
「ん、あれ、こういうときってキスから?」
人に聞いてくる時点で、本当に先が思いやられた。
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