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第13話
「ムチムチはやめろよ、デブみたいだから」
「あ、はい、すんません」
やめろと言われたらやめるを忠実に守っていた。犬みたい。
「やー、でもイイ感じに細マッチョじゃん。俺さー、中高でハンドボールやってたんだけど、全然筋肉つかなかったんスよねー」
「ハンドボールやってて筋肉つかないって相当だな」
「そーなの、めっちゃ筋トレしてプロテイン飲んでたのにねー」
両手の親指の腹が、両胸の乳首に触れる。体が跳ねた。
そのままゲームのコントローラーでもいじるみたいに、押しつぶしながら縦横無尽に動かされた。
「ちょっと、待て……っ」
「あ、乳首好きな感じ?固くなってきた」
興味津々すぎるだろ。俺が肩を掴むのも構わず、そのまま触り続ける。ハンドボールやってたとか言うだけあって、骨格のしっかりしたいい肩をしていた。
「ヤバい、見てほら、乳首ヤバいよ」
自分の乳首なんか見たって面白くもなんともない。
ただ、奴にほぐされて敏感になってしまったのも事実だった。
体の奥底から、少しずつ沸騰してくる、昔抱かれたときの記憶。
鍋底の小さな泡のように、フツフツと、少しずつ浮かんでくる。
男に抱かれて嫌ではないと思った、あのときの自分の心の破片が、形を成して今の自分の興奮に溶け合っていくのを自覚した。
「バカじゃねーの、男相手に」
そのまま首筋に軽いキスを見舞われながら、ベルトとジーパンのボタンを外される。
「あ、兄さんもちょっと勃ってる」
ボクサー越しに軽く手が触れただけなのに、十分バレるくらい反応していた。
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