16 / 28
第16話
童貞には夢があった。
AVで学んだ知識をフルに生かして、いろんな体位を試したいという壮大な夢が……。
そんな顔をしていたが、結局いざとなったら組み伏せただけで止まっていた。
「えーと、どうしよ、何からしたらいいかな」
だんだん顔が赤くなってくる。黙って見てると「あんま見ないでよ」「なんか喋ってよ」とか言ってくる始末だった。
元が真面目なのか、力任せに無茶にどうしてこようということもない。
「お前なぁ。このザマで相手が女だったら、速攻振られてんぞ」
呆れて無理矢理起き上がる。ベッドにあぐらをかいて、同じように座るよう促す。やっぱり少しフォローしてやんないとダメか。
「来な、ほら」
手を広げて呼び寄せる。素直に抱きついて来た。
「少し落ち着け。慌てないでゆっくりやれ。な。俺逃げねぇから」
ポンポンと背中を叩いて、子供をあやすように宥める。俺の肩口にすっかり顔を埋めて、丸くなってしまった。
「……ごめんね兄さん、迷惑でしょ」
「もう腹括ってるから大丈夫だ」
「もー、俺緊張してて」
「童貞卒業の夜なんだからしょうがねぇよ」
「でもさぁ」
「童貞の癖に扱い慣れてたら怖いだろ逆に」
「そうだケドォ」
「だろ?」
「ねぇ、兄さんときどうだった?」
「あ?」
「童貞卒業のときどうだった?」
「大昔の話で忘れた」
「だから兄さんいろいろ忘れすぎでしょ」
少しリラックス出来たのか、奴は笑った。くだらない話を続ける。
「あったけぇなお前。体温高め?暑いくらい」
「あんま気にしたことないけど」
「湯たんぽみてぇだな」
なんだかだんだん気持ちよくなって来る。眠たいようなムズムズするような心地。
首筋に優しくキスをする。奴の呼吸が跳ねた。
ともだちにシェアしよう!