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第16話

童貞には夢があった。 AVで学んだ知識をフルに生かして、いろんな体位を試したいという壮大な夢が……。 そんな顔をしていたが、結局いざとなったら組み伏せただけで止まっていた。 「えーと、どうしよ、何からしたらいいかな」 だんだん顔が赤くなってくる。黙って見てると「あんま見ないでよ」「なんか喋ってよ」とか言ってくる始末だった。 元が真面目なのか、力任せに無茶にどうしてこようということもない。 「お前なぁ。このザマで相手が女だったら、速攻振られてんぞ」 呆れて無理矢理起き上がる。ベッドにあぐらをかいて、同じように座るよう促す。やっぱり少しフォローしてやんないとダメか。 「来な、ほら」 手を広げて呼び寄せる。素直に抱きついて来た。 「少し落ち着け。慌てないでゆっくりやれ。な。俺逃げねぇから」 ポンポンと背中を叩いて、子供をあやすように宥める。俺の肩口にすっかり顔を埋めて、丸くなってしまった。 「……ごめんね兄さん、迷惑でしょ」 「もう腹括ってるから大丈夫だ」 「もー、俺緊張してて」 「童貞卒業の夜なんだからしょうがねぇよ」 「でもさぁ」 「童貞の癖に扱い慣れてたら怖いだろ逆に」 「そうだケドォ」 「だろ?」 「ねぇ、兄さんときどうだった?」 「あ?」 「童貞卒業のときどうだった?」 「大昔の話で忘れた」 「だから兄さんいろいろ忘れすぎでしょ」 少しリラックス出来たのか、奴は笑った。くだらない話を続ける。 「あったけぇなお前。体温高め?暑いくらい」 「あんま気にしたことないけど」 「湯たんぽみてぇだな」 なんだかだんだん気持ちよくなって来る。眠たいようなムズムズするような心地。 首筋に優しくキスをする。奴の呼吸が跳ねた。

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