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第21話
寝転がった俺の上に、奴が乗ってくる。
この眺め久しぶりだなぁ。
感慨に浸っている場合でもなくて、奴の顔にはピリッとした緊張感が漂っている。
リラックスさせるつもりで、ふと口にした。
「あのさ、俺」
「ん?」
俺の内腿を開きながら首を傾げてくる。
「お前に言ってないことあるわ」
「何、それ今聞いた方がいい話?」
先っぽが、ぬるぬるのケツの穴に触れる。脇の辺りに、手をついて。構わないで話を続けた。
「俺、何年か前に、一回だけ男と寝たことある」
「は」
押し入ろうとした動きが止まった。
「え、ちょ、マジで?え?兄さんガチでそっちの人だったっけ?」
組み伏せたままあたふたしている。あ、失敗した、勘違いさせたままだと面倒だな。
「相手がそっちの人だったんだよ。お持ち帰りされた」
即座に否定する。奴はつばでも飛ばしてくる勢いで驚いていた。
「マージでっ? だから兄さんさっきローションの手際よかったんだ!」
納得~と的を得たような顔をしている。あの時は自分でほぐしたりなんてしていないけど。
「相手どんな奴だったんすか?デカかった?」
世間話に花が咲く。少し緊張もほぐれたか。
「デカかったね。名前聞いたらびっくりすんぞ」
「え、知り合い?バーの誰か?」
「ちげぇよ」
そう思っても仕方ないか。頭を抱き寄せ、そっと耳打ちする。
あの日、高級ホテルに俺をお持ち帰りした男の名前を。
途端、奴が吹き出した。
「ちょ、兄さん、嘘つくにもひでーわそれ!俺バカだけどさすがに知ってっからねその人!あり得ないっすよそれは!」
正しいリアクションだった。俺も誰かにそんなこと言われたらそう思うもん。
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