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第2話

「ちょっとお、兄さん最近全然絡んでくんないじゃないっすかぁ、メッセージ送っても既読スルーだし、電話にも出ないしぃ」 いちいち語尾を伸ばすのが、コイツの話し方の特徴だった。 俺はメールや電話が嫌いだった。SNSはスマホを買い換えた時に勝手に登録されてしまっただけで、生存確認用にもなっていない。 それでも連絡が取れて会えるんだから、不思議なもんだ。腐れ縁みたいなもんかね。 「はいはい、悪かった悪かった」 「あ!それー、全然思ってないヤツじゃないっすかー、マジ傷つく~」 いつものバーで待ち合わせ。 店内放送がクラブみたいにデカくて、大事な話をしない相手向きの店。まさに、コイツと会うにはうってつけだった。 バーカウンターの一番手前の席が定位置。ちなみに、右が俺で左がコイツ。今日も眼鏡をかけていた。 「大体、絡んでくれないとか言ってるけど、そもそも俺たちそんなに連絡取り合ってねーだろ」 「じゃあ今日から始めましょ、ね?今日からマメにメッセしましょ」 「やーなこった」 「なーんーでー!ちょ、マスター、今日の俺の飲み代、兄さんにツケといて!」 「ツケてもいいけどメッセはしねぇぞ」 「どんだけ嫌なの!?」 オーバーリアクションもコイツの癖だった。 バーカウンターの低い背もたれから落ちそうなくらい背中を反らせる。 「ありえねー、女だったら今頃みんなID交換してんのに、兄さんマジありえねーんだけど」 「ごめんな、俺女じゃねーから」 「知ってる!知ってるわ!さすがにわかるわ!」 いちいちうるさいけど、店の中でかかってるレゲエの方がもっとうるさい。 持ち直しの早さもコイツならではだった。

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