2 / 28
第2話
「ちょっとお、兄さん最近全然絡んでくんないじゃないっすかぁ、メッセージ送っても既読スルーだし、電話にも出ないしぃ」
いちいち語尾を伸ばすのが、コイツの話し方の特徴だった。
俺はメールや電話が嫌いだった。SNSはスマホを買い換えた時に勝手に登録されてしまっただけで、生存確認用にもなっていない。
それでも連絡が取れて会えるんだから、不思議なもんだ。腐れ縁みたいなもんかね。
「はいはい、悪かった悪かった」
「あ!それー、全然思ってないヤツじゃないっすかー、マジ傷つく~」
いつものバーで待ち合わせ。
店内放送がクラブみたいにデカくて、大事な話をしない相手向きの店。まさに、コイツと会うにはうってつけだった。
バーカウンターの一番手前の席が定位置。ちなみに、右が俺で左がコイツ。今日も眼鏡をかけていた。
「大体、絡んでくれないとか言ってるけど、そもそも俺たちそんなに連絡取り合ってねーだろ」
「じゃあ今日から始めましょ、ね?今日からマメにメッセしましょ」
「やーなこった」
「なーんーでー!ちょ、マスター、今日の俺の飲み代、兄さんにツケといて!」
「ツケてもいいけどメッセはしねぇぞ」
「どんだけ嫌なの!?」
オーバーリアクションもコイツの癖だった。
バーカウンターの低い背もたれから落ちそうなくらい背中を反らせる。
「ありえねー、女だったら今頃みんなID交換してんのに、兄さんマジありえねーんだけど」
「ごめんな、俺女じゃねーから」
「知ってる!知ってるわ!さすがにわかるわ!」
いちいちうるさいけど、店の中でかかってるレゲエの方がもっとうるさい。
持ち直しの早さもコイツならではだった。
ともだちにシェアしよう!