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第50話 夜まで待てない
※直接的な性描写があります。苦手な方は、読み飛ばしてください※
二人で眠ったベッドから出て、二人で作った朝食を食べ、二人並んで歯を磨く。そんな日が続いていた。
対バンは四回終わって、二勝二敗。こればっかりは好みだ、どれだけテクニックを駆使しても、箱の客層に左右される。あと一回で勝敗が決まる。そんな中にあっても、俺は毎日のように京を『可愛がって』いた。
初めは夜の行為を恥じらっていた京も、だんだんと慣れてきたようだ。時に大胆にも思えるほど、行為を強請る京に、俺は興奮を隠せなかった。
「おはよう、真一」
「おはよう、京」
恋をすると綺麗になる、と俗に言う。「おはよう」を重ねる度に、京は艶めいてより綺麗になっていった。
キッチンで野菜を切る京を、鼻歌を歌いながら後ろから抱き竦める。京が困ったように笑った。
「危ないだろ、真一」
「ああ、危ねぇから、包丁置け」
「何を……ぁんっ……」
俺は、京の右手を取って包丁を手放させると、そのまま片手を京のパジャマの中に潜り込ませた。下着越しに、京自身を強く撫でる。すぐにそこは硬く育った。
「あ、やっ……こんな……所で……っ」
「しょうがねぇだろ……朝飯作ってるお前が、色っぽ過ぎるんだから……」
摩擦を強めると布越しにも分かるほど湿り気をおび、膝が折れて京はキッチンの縁 に両手をついた。
「京……」
耳朶を甘噛みしながら低く囁くと、京は耐えきれなくなったようで、微かに震える声で強請った。
「あ、真一、もっとっ……」
俺もすでに硬くなった自身を京の尻に密着させ、下着を越えて中に直接、掌を忍ばせた。熱くなっている京のそこを、握ってゆるゆると扱く。もう何日も、スローセックスでドライオーガズムを迎えていたが、吐精はしていない。生理的に溜まった精液が、吐き出したくて京を大胆にさせていた。
「あ……あっ、イっちゃう……!」
俺の動きに合わせて腰を振る京が凄まじく刺激的で、俺も布越しに後ろから肉欲をぶつけた。
「イっちまえよ」
「あ、あぁっ……!」
激しく二人で腰を使うと、まな板の上の鮮やかな紅いパプリカが、揺れてシンクの中に転がった。京は思いきり仰け反って、息を詰めて硬直した。
「んあっ、あ──……!」
しばらく、腰が揺れる。溢れる密が終わりを迎えるまで、扱いてやると、京は高い声で泣いた。掌で受け止めた精液を後孔に持っていき、指を二本入れてかき乱し、更に京を煽る。後ろへの刺激にも慣れ、快感と共に蕾は収縮するようになっていた。
「あ……もっと……奥っ……」
ハスキーに掠れた声で、無意識に京が呟いた。俺はほくそ笑むと共に、余裕のない声で京を責めた。
「馬鹿、これ以上奥ったら……指じゃ届かねぇよ」
「ぁっ……ん……!」
京は思わず漏れた言葉に恥じらい、俺の指を受け入れたそこをきゅっと締まらせた。
堪んねぇな…。俺はごくりと喉を鳴らす。
でもこれから仕事なのに、事に及ぶ訳にもいかない。俺は、京への刺激を徐々に弱め、やがて指を引き抜いた。京はようやっと立って、シンクの縁に掴まっている。もっともその腕の力も抜け、俺が京の腹に回した片手で、支えてやっているのだが。息を弾ませ、京は後ろの俺に体重をかけてきた。
「はぁ……真一の……馬鹿っ」
涙声で訴える。
「どっちの意味でだ?」
俺は京を支えながら、片掌でねっとりとその尻を撫でた。
「やっ……!」
高い嬌声が上がる。やっぱり、こっちの意味か。
「悪りぃ、京。もう時間だ。最後までしてやれないのが分かってるのに、手を出した俺が悪りぃ。朝飯は良いから、シャワー浴びてこい」
言外に抜いてこいと促すと、意外にも京が腕の中で反転し、色っぽい目付きで睨め付けてきた。
「責任っ……取れよ」
「いや、俺も抜きたくなっちまうから……」
「……から……」
消え入りそうな声に、俺は京に耳を近付けた。
「あ?」
「……良いからっ!」
顔を真っ赤にして、京が怒鳴った。良いだと?
「言ったな。後悔するなよ」
俺はしなやかで華奢な京の身体を横抱きにすると、バスルームに運ぶ。力の抜けてしまった京の身体は、大人しく腕の中に収まった。支えてやりながら、服を脱がすと、シャワーを出し、京を床に座らせた。まるで犬のように、京が首を振って水滴を飛ばす。俺ももどかしくスウェットを脱ぎ、バスルームのドアを閉めた。
京はまだ腰砕けで、立つ事が出来ない。その顔の位置は、俺の下腹部で、俺に悪事を企てさせた。
「京……口でしてくれないか?」
「えっ……!」
「勿論、嫌なら構わねぇが」
目の前で膨れ上がって脈打っている俺のものを目にして、京は驚いた。堪えられず、ダメ元で言ってみた言葉だ。期待はしていなく、自分で抜くつもりだった。だが。
「ど……どうすれば良いの?」
「えっ」
今度は俺が驚く番だった。京は、腫れ物に触るように両手でそうっと俺の雄を握った。それだけで、俺はイきそうになり息を詰める。
「京……良いのか?」
「うん。真一も気持ちよくなって欲しい……」
熱いシャワーのせいでなく、真っ赤に火照った顔色で呟く。俺は優しく京の後頭部に手を当てると、その唇を俺自身へと導いた。
「ただ、銜えてりゃ良い。後は俺がやる」
「んっ……」
京の桜色の唇に、俺の雄が含まれる。だが全部収まりきらず、余った根元を両手で握り、瞳を閉じて。無自覚に口内で舌が蠢き、俺を追い詰めた。
「京……っ」
俺はゆっくりと注挿して、快感を夢中で追う。京の眉根が少しずつ、息苦しさに寄っていった。それは、快感に歪むカオに近く、余計俺を興奮させる。
駄目だ……イっちまう……!
「京、離せ。……京?」
「ぐっ……ふっ……」
京は自ら頭を動かして、必死に俺を銜え込んでいた。俺は焦る。
「馬鹿、京……っ」
京の髪を掴んで引き剥がそうと力を込めるが、無理矢理引っ張る訳にもいかず躊躇している内に、京が唇をすぼめて強く俺を吸った。
「……っ!」
不覚にも、中に出しちまった。意思とは裏腹に、出し切るまで腰が動く。俺が脱力すると、ようやく京が俺を離した。
「う……ケホッ」
「……いきなり無茶するな、京……」
「気持ち……良かった?」
「ああ、俺は最高だけどな……って京、まさか飲んじまったのか!?」
「良かった……あ、うん。飲んじゃった。駄目だった?」
何処か茫洋と言う京に、俺の方が気恥ずかしくなって諭す。無論、愛する京に受け入れて貰った事は嬉しいが。
「駄目じゃねぇが……不味いだろ」
「真一のだと思ったら、不味くない」
「お前な……これ以上煽るな。立てるか?」
「うん……あっ」
立ち上がろうとしてよろけた京の腕を取り、俺はその手に、下段にかけたシャワーヘッドを握らせた。必然的に京の分身にシャワーが当たり、京が小さく喘いだ。分身は、触れていないにも関わらず、天を仰いで開放を求めている。お湯とは違う、粘着質な先走りが、とろとろと止めどなく溢れていた。
「お前……しゃぶっただけで感じちまったのか?」
「だって……真一が気持ちよかったら、俺も……ぁんっ、真一……っ」
お湯に打たれる弱い刺激に焦れて、京は何度か腰を振った。その仕草にも、俺は思わず喉を鳴らす。
「真一……!」
甘えるような囁きに応え、俺は後ろから紅梅色 に息づく京自身を手に取り、もう一方の指を三本、蕾に沈めた。
「んぅっ……」
今までは二本までにしておいたが、もうそろそろ三本にしても良い頃だろう。案の定、蕾は花開き俺の指を迎え入れた。前立腺を擦りながら拡げるように指を動かすと、泣き声が上がる。
「んぁ、あ、あっ、真一……!」
前も後ろも攻め立てると、京も合わせて腰を振った。滅茶苦茶にしてしまいたい衝動を抑え、京を高みへと導く事に集中する。
「あ、イくっ……!!」
元より張り詰めていた京は、呆気なく吐精した。
「はぁ、ん……」
懸命にシャワーヘッドにしがみつく京の分身を流し、脇に手を入れて支え、床にぺたりと座らせると、俺は手早くボディソープで二人分の身体を洗う。
正史郎さんとした約束、『デビューまでは働く』がチラついた。対バンの日に正史郎さん、マコ、京が休みを貰う分、『欠勤は許さない』と。
泡を流し終えると、俺は京を促した。
「京、大丈夫か?」
「……だいじょばない」
頬と言わず身体中を赤く染め上げ、立ち上がると俺を押し退けるようにしてバスルームを出ていく。
「何だ? 今更照れてんのか?」
「違う」
手早く身体を拭いて、京は素っ気なく服を選ぶ。あ、やっぱ怒ってるか……。
「でも、強請ったのはお前だぞ」
「朝からサカったのは、真一だろ!」
サカるって……俺は発情期の猫か。
「悪かったって。お前があんまり、色っぽかったから、つい」
「……夜まで待てない……」
そう言って、京は行ってきますのキスを俺の唇の端に落とし、出勤していった。
……ん? 何だ、今の。怒った京の態度と台詞が噛み合わず、俺は一瞬呆気にとられた。だがすぐにその意味を悟り、クッと笑いを堪える。
『夜まで待てない』。つまり、もっとしたいって事か。京……。帰ってきたら、またたっぷり『可愛がって』やる。
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