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プロローグ-6
【彩】
「でも、未練たらたらって訳では……ないね」
【麻生】
「Sに目覚めるきっかけにもなったし、いい人でした」
【彩】
「……そっか」
彩さんはそうぽつりと呟くと、俺の方を向いてこんな事を言う。
【彩】
「……ねえ麻生くんは私って……あり?」
不安そうに見つめられると、俺も男だ……気持ちが揺らいでしまう。
しかしきっぱりとこう言った。
【麻生】
「ダメですよ彩さん。不倫になります」
【彩】
「だよね~……」
彩さんは、可哀想な人だ。
自分の欲求が結婚によって縛られて、満たされずにいる。
本当は俺にだって……いや、サディストならなんでも、しがみつきたいだろうに。
そう思うと俺は、贅沢なのかもしれない。
【彩】
「……パートナー探し、頑張ってね!」
彩さんと別れた後、俺は暇潰しの為にSNSを開いた。
フォロワーが一人増えていたことに目を付けて、俺はすぐにその人をフォローする。
実は興味のない人をフォローすることも、パートナー探しでは大事だったりする。
するとすぐその人からダイレクトメッセージが届いた。
『Mです!罵ってください!』
……溜め息が溢れるのを抑え、俺はすぐにブロックのボタンを押した。
実はこういった唐突なメッセージは嫌だったりする、対応に困る。
Sの人全てがこんな懇願を気に入り返事をするわけがない。
きちんと挨拶をして、自己紹介も諸々して、丁寧に接するのが俺は好きだ。
そんな人は実はごく微量。
当たり前のマナーだと思うんだけどな……。
【麻生】
「お」
また一人フォロワーが増えた。
珍しくバリバリの経験者Sさんからのフォロー。
【麻生】
「……男性だ。えっと……」
『遥斗っていいます。
性的サディストなため、普段からSってわけではありません。
LGBTのGにあたり、女性からは受け付けてません(ごめんなさい……)。
好きなプレイは
#調教 ←縄より鎖
#玩具
#緊縛
苦手(できない)なプレイは
#スカトロ
#蝋燭
#暴力
です、よろしければ仲良くしてください( ・`ω・´)』
【麻生】
「はると……」
俺の名前も、悠人。
漢字は違うけど、ゆうと……とは読めない、ちゃんと「はると」だ。
だから気になったのだ。
本当に純粋な興味、ゲイのフォロワーさんなんて初めてで、もしかしたら仲良くなれそうと感じたのだ。
第一印象は大事なので控えていたが、久々に自分からダイレクトメッセージを送る。
【麻生】
『初めまして、フォローありがとうございます。
俺もサディストで、LGBTのBに当たりますのでよろしければ仲良くしていただければ嬉しいです』
固すぎたか……?
まあ、送ってしまったものを気にしても仕方がないけど……。
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