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プロローグ-5

だからきっと愛想を尽かされてしまったのだと思う。 いや、もう、愛想というよりかはもう飽いていたのだ。 ある日、るか様からこんなことを言われたことがある。 【るか】 『あなたはMとしてSに何ができる?』 それは、些細な質問かもしれないし、これからを決める重要な質問なのかもしれない。 先回りします 尽くします たくさん言うことを聞きます。 言えることは本当にたくさんあった。 ……けど俺は、言えなかった。 頭がすっからかんになって、必死に考えて、でも口は開かなかった。 るか様のこと、何にも分かっていなかったのだ。 俺は自分のことで必死だったから。 【るか】 『なんか、もういい』 『悠人くん全然考えてない』 『こんな人が専属ってなんか……嫌だよ』 【麻生】 「……っ」 はっとした時には遅かった。 るか様は、目を潤ませてそのまま駅の方向へと走っていく。 その時立ち尽くすことしか出来なかった俺は実に無様だ。 俺はあの時、どうすれば良かったのだろうか。 引っ張って、抱き寄せて、意地でも抵抗すれば良かったのだろうか。 嫌だって、いつまでも専属でいたいって、例え女々しすぎても……。 後日、るか様から「首輪を外して欲しい」と連絡があった。 首輪を外すことは、契約の解除を意味していた。 俺は死んだ脱け殻のようだった。 何にも感じず、悲しまず、揺るがなかった。 でも後悔は後々背中を這いずり回る。 俺は、Mとして何ができるかを一生懸命考えた。 俺なりにできることはある、けれども、相手を想うことはできない。 俺は、M失格なのだろうか……。 そんな中で目まぐるしい日々を送っていると、なんかもう疲れてしまっていた。 俺は思考を逆転し、SとしてMに何ができるかを考えていた。 そうしていくうちに被虐心など薄れていくのは当然のことで、サディストになるのも必然的だったと思う。 【麻生】 「探すか……俺の専属奴隷」 忘れたかった訳ではないけど忘れたかった。 あのキラキラした思い出がいつまでも住み着くのは、落ち着かない。 恋をしていたからである。 自分なりのけじめと罰。 俺はパートナー探しをスタートさせ、……今に至る。

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