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第8話

毎晩のように来てくださってた霧雨さまが 最近、店にいらしてない 今宵もあなたを想い、他の人に抱かれる …………最後に会ったのは、いつだった? 客に抱かれながら、 考えるのはあの人の事ばかり………… 何故、急に……? 何か気の触る事を言ってしまった……? それとも男娼との遊びに飽きて? あんなに可愛いと言ってくれたのに………… …………優しく抱きしめてくれたのに もう会えない………? あなたに……会いたい…… 今宵は霧雨が降り、少し肌寒い …………同じ名の雨 それだけで何故か涙が出そうになった ………………あの人の心が知りたい あの人の名しか知らない………… あなたに会えない日々は、 まるで色褪せたようだった 常連客を見送った後、店の外で、 降り続ける雨をずっと見ていた 「風邪引くぞ。琥珀」 「飛翔……」 「霧雨さまを待ってるのか? 琥珀。客に本気になるなよ」 「…………俺は」 飛翔に指摘される位、 のめり込んでいる自覚はあった 「飛翔!お客様だ。茜の間へ」 「はい。主様」 「じゃ、俺は行くけど…… 風邪引く前に中に入れよ」 「分かってる……」 心配そうな飛翔を見送る 「琥珀!」 待ちわびた人の声 振り向くとそこには、 会いたくて会えなかった人がいた 霧雨さまが手を振り、微笑まれる 目が合った瞬間 涙が溢れた 「……お会い出来ず……寂しかった……です……」 つい漏れてしまった本音 「すまない。忙しかったんだ」 霧雨さまは抱きしめて下さった …………温かい さっきまで寒かったのに…… 霧雨さまにはご自分の生活がある …………分かってるのに 「霧雨さま…… 今宵は何も考えられなくなる位、 抱きしめてください」 「お前の望むように……琥珀……」 その晩 隙間を埋めるみたいに、優しく抱かれた この感情をなんて説明していいか、 分からない 側にいるとこれ以上にない位、満たされる 少し離れただけで、 切なくて胸が痛くて、泣けてくるんだ……

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