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第9話
「すまない。この後もしばらく忙しいんだ」
霧雨さまは自分の家に帰っていく
また会えない日が続く
言い表せない位の寂しさ
……………募る想い
次はいつ、あなたに会えるのか……
「琥珀。桜の間に。永井さまだ」
「はい。主様」
「久しぶりだな。琥珀」
「ご無沙汰しております。永井さま」
永井さまは数少ない優しい客だ
俺の嫌がる事はしないし、
行為も丁寧で痛みも少ない
なのに
「…………っ、はぁ」
何故だ
どうしてこんなに胸が痛い
「…………ぅ、ん……っ」
苦しい…………
…………張り裂けそうだ
「琥珀……痛いのか?
何故、泣いてるんだ……」
言われて、頬を拭った
……………痛くなんてない
「……なんでもありません」
強 いて言えば、心が痛いだけ…………
何をやっているんだ
この仕事を何年やってる
…………自分の気持ちなど、必要ない
体を売り、代を頂く
ここが俺の生きる場所
霧雨さまの笑顔を思い出すと、
胸が締め付けられた
ー霧雨さま以外の人に抱かれたくないー
初めて思った
ー逃げ出したいー
そんな事は出来ず、涙を飲んで受け入れる
自分の気持ちに気付いてからは、
日を追う毎、苦痛になる
行為の最中に泣いてしまう事もあり、
客を心配させた
会えない間
久し振りの逢瀬
あなたが帰ってしまった後
気が付けば、泣いてばかりいる
…………霧雨さま
あなた以外の人に抱かれるのが、
こんなに苦しいなんて…………
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