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第10話

それはある日、突然だった 「琥珀。 お前は安西様に身請けされる事が決まった」 「……主……様」 安西様は財と力、後ろ盾を持ってる家 幸せだった日々は敢えなく、 幕を閉じる事となる 身請けの話は自分の力ではどうしようもなく 泣く泣く受け入れるしかなかった 入口で、ただ呆然と立っていた いつもと同じ時間 霧雨さまがいらっしゃった 「琥珀?待っていてくれたのか? 外は寒いのに……」 霧雨さまの手が頬に触れた 感極まって泣いた俺を、 霧雨さまは静かに抱きしめた 「…………どうした?琥珀。 何かあったのか?」 「今日で……お別れでございます……」 「え?」 「身請けが決まりました。 霧雨さまにお会い出来るのは、 今宵で最後となりましょう」 言うべきではなかったかもしれない だけど 大切にしてくれたあなたに きちんと礼と別れを伝えたかった 最後に…… あなたへ伝えてもいいだろうか…… 「霧雨さま…… あなたは俺にとって特別なお方でした。 一緒に食事をしたり、 時には看病をしてくださった事も ありましたね。 優しく抱いてくださった事、 大切にしてくださった事、 …………一生、忘れません。 あなたが笑いかけてくださる度、 幸せを感じていました。 …………あなたにお会いできなくなるのは、 寂しく……辛いです…… 霧雨さま…… ……お慕いしておりました 今まで出会った誰よりも………… 男娼の身でありながら、 浅ましくも、このような想いを持ち、 申し訳ございません。 どうか…… あなたの進む道が幸せでありますよう、 心より願っております」

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