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第11話
「一緒に逃げようか。琥珀」
なん……て……?
霧雨さまは……なんて仰 った?
「足抜けは重罪でございます」
「…………」
「俺だけではなく、
霧雨さまも罰せられてしまうでしょう」
『一緒に逃げよう』
…………その言葉だけで
一生、生きていけると思った
「本当はね……随分前から、
お前が他の男に抱かれてると思うだけで、
夜は眠れず、胸が酷く痛んだんだ」
「霧雨さま……」
そんな風に想ってくださったなんて……
「実は前に店主に身請けの話もしたんだ。
お前はここの看板。
見請けするにも、はした金じゃ足らない。
情けないが、あまりの代に
手も足も出せなかった。
最近、忙しかったのは……
仕事を増やしてたんだ
いつか、お前を身請けしたくて……
捕まれば、お互い折檻され、
酷い目に合うだろう。
……でも、お前と一緒にいたいんだ。
お前のいない人生は考えられない。
一緒に来てくれ。琥珀」
真剣な顔……
…………信じられない
そんな風に言ってくださるなんて
「…………なりません。霧雨さま」
「丑 の刻に迎えに来る。
裏の川辺、桜の木の下で落ち合おう。
覚悟が決まったら、来て欲しい」
「いいえ。霧雨さま。
あなたは俺とは違うのです。
男娼と一緒になるなど……
あってはございません」
「では、この想いをどうしたらいい?
お前を想って……
胸が張り裂けそうなんだ……」
霧雨さまの言葉に涙を堪える
自分の手が震えてる……
胸が詰まって言葉が何も出てこない
「誰かいるのか?」
主様の声!!
「丑の刻に待ってる」
一言、俺の耳元で囁くと、
霧雨さまは行ってしまった
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