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第12話

たかが男娼の為に、 霧雨さまは家族や仕事を捨てるというのか …………そんな事、あってはいけない 行かなければいい そうすれば、霧雨さまは現実に戻る 刻一刻と約束の時間が迫ってくる 『一緒に逃げよう』 そう言われて嬉しかった…… 身請けされれば、 霧雨さまには二度と会えない もう会えないなんて…………! 耐えられそうに……ない………… ………………もし、許されるなら あの人と一緒に生きていきたい………… …………望んでもいいのだろうか 約束の場所に行っても、 霧雨さまはいないかもしれない それでも ………………信じたい あなたの言葉を あなたの想いを 二人で寄り添えるこの先を………… ………………せめて 暗闇の中、音を立てないよう金品を集める 仕事をして今まで貯めてきたもの 父様の形見である着物 客から貰った金や数々の品 父様…… 形見を手放すことをお許しください…… 当面、生きていくのに困らない分を 手の平に握りしめた 残りの分は…… 迷惑をかけるであろう主様へと 弟のように可愛がっていた飛翔へ…… 紙に一言の詫びとそれぞれの金品を分ける 飛翔…… 一言も言わず、出て行く事を許してくれ 扉を開けようとした時 「行くのか。琥珀」 声をかけられた 「起きてたのか。飛翔」 「皆まで言うな。分かってる。これを……」 手渡されたのは、町でよく見かける服だった 「その格好じゃ流石に目立つ。 これに着替えろ」 「飛翔……」 飛翔の目に涙が浮かぶ 「今までありがとう。琥珀。 親に売られてから、ここへ来て、 お前には何度も助けられた…… 最初の頃、俺は客が取れなくて、 食い物をもらえなかった時、 お前はいつも少ない飯を分けてくれたよな。 困ってると、いつも助けてくれて、 同い年だけど兄みたいに思ってた。 俺からしてやれる事は、 何も……ないけど…… …………琥珀の幸せを誰よりも願ってる。 追手に捕まらず、逃げ切れよ。 必ず幸せになるんだ」 泣きながら飛翔は伝えてくれた 「そんな事はない。 お前の気持ちがどれ程、嬉しく心強いか…… 飛翔。辛い毎日…… 俺もお前がいたから、 なんとか頑張ってこれた。 俺こそ、ありがとう……」 五年間一緒に過ごした 唯一の拠り所 ………………きっと忘れない 「行き先は……?」 「まだ何も……多分、北へ行くと思う」 「分かった。 何か聞かれたら、南を匂わせておく」 「…………すまない。飛翔。 どうか、元気で」 泣きながら頷く飛翔と最後に抱き合った

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