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第93話
ーその日の夜ー
お風呂から上がり、コンタクトは目に痛いから眼帯をした。
コンコンっ
ん?こんな時間に誰だろう…。
ガチャッー
七瀬『っ…会長。』
扉を開けると会長が立っていた。
紅華『えっと…入ってもいいか?』
断る理由すら考えられなくて取り敢えず入ってもらう。
七瀬『どうぞ。』
会長を部屋に通し、お茶を会長に出してソファーに腰を下ろす。
七瀬『…どうしたんですか?』
七瀬は何時も通りを演じた。
紅華『悪い…一緒に踊りたかったんだが。』
…僕も踊りたかった、なんて言えるわけない。
七瀬『いえ、しょうがありませんよ。』
ー約束ー
というのは何なのだろうか。
紅華『乱菊が、失礼で悪かった。』
七瀬『普通でしたよ、謝ってばかりですね。』
どうして謝るのだろう、何一つ悪いことはしていないのに。
会長の優先順位の中に僕が入れなかっただけだ。
紅華『…』
七瀬『…それより、聞いてもいいですか?』
紅華『何だ?』
七瀬『…約束って何ですか。』
それが気になってしょうがないから聞いてしまった。
紅華『…穂波には関係ない。』
関係ない、ね…。
七瀬『…そうですか。』
関係ある人になりたかった。
胸がズキズキと痛む。
どうして痛いんだろう。
あ、そうか…
会長を好きなんだ…。
自覚と同時に電話が鳴る。
prrrr.prrrr
紅華『…電話鳴ってるぞ。』
七瀬『そうですね。』
紅華『出ろ、待ってる。』
七瀬『待つ必要があるんですか?』
好きだと気づいたら、関係ないと言われて苦しかった。
だから、帰って欲しかったんだけど…
紅華『いいから。』
何がいいのか分からないんですけど。
心の中で舌打ちをして電話に出る。
何故だろう…
この時とてつもなく嫌な予感がした。
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