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第110話

七瀬は紅華を目に焼き付けるように見てから、 瞳を閉じてひく。 ピアノの美しい音色に歓声はあがるが七瀬の意識は今はここには無いので、気づかなかった。 物凄く涼しい顔をして目を瞑り口角だけを上げておく。 冷や汗が体全体をつたっていく。 その状態のままダンスパーティは幕を閉じた。 本当はすぐにでも倒れたいのだが、 我慢をして誰も居ない舞台裏に行く。 七瀬『…はぁっ、はぁっ…いっ"‥…』 痛さのあまり座り込んでしまう。 目の前が霞み、体は動かない。 キィ… 誰か入ってきた。 隠れたいけどこんなんだから動けない、 せめてもの抵抗で顔を伏せる。 『ナナ君…?』 この呼び方は「陽」だ。 七瀬『…はぁっ、はぁっ』 今は服を着てるので傷はバレない。 僕に気づいた陽はすぐに駆け寄ってきた。 陽『ナナ君?!どうしたの?! …すごい熱、保健室連れて行かなきゃ…』 そんなとこ連れていかれたら! 七瀬『…だ、め!ッ…はぁっ』 保健室なんか行ったら絶対に傷バレる… この熱は、そのせいだ。 風邪なんかじゃない…。 陽『何か隠したそうだけど、さすがにこれは無理だよ。抱っこするけど大人しくしててね。』 七瀬『…ッなんで、お姫様抱っこ?!』 他に運び方なんて沢山あるだろう。 なんて抗議するとサラッと返された。 陽『軽いからこの方が楽。』 …傷が痛い、意識は保たないと。 脱がされないように…。

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