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第4話 ヒッコシ
俺と兄弟になるやつは景森埜 って言うらしい。
まさか、引っ越し当日まで会えずじまいとは…そんなことあるんですかね?
嫌われてるのか避けられてるのか…斎さんはとっても謝っていたけれど、一応再婚には賛成らしいことはわかった。
まぁ…小学生のガキじゃあるまいし、自己紹介して俺たち仲良くしましょう!とかっていうのもかったるいからいいんだけどさ。
どんな奴か…とか好奇心がないわけじゃないけど、その弟とちゃんとやっていけるかどうか不安は大きい。
引っ越し当日。
彼は眠そうな目を擦りながら現れた。
……
あ?
「どうも、景森埜 です…」
ぼさぼさの頭を掻き、殆ど寝てる状態の彼は俺の目の前に立ってペコリとお辞儀する。
……同い年?なんですか?
「あ、えと……中也……です。お世話になります…」
……あかの他人ってそうですよね。
兄弟になるからといって、体格が体形が同じとは限らない。
目の前に立っている埜って奴は俺よりも身長が高くて…斎さんに似ていてイケメンだ……おぉ親子だ…って思った。
少し見上げる感じになってしまうのが、男としては複雑だけど仕方ない。
整った顔は眠そうなのに瞳は澄んでいて見ていると吸い込まれそうになる。
「埜……くん?」
「そこ…埜でいいんじゃない?」
「あ、はい」
「……」
「……」
う、ううう……
見られてる…めっちゃ見られてる俺…
埜の顔をまともに見ていられなくて、視線を足元に落とした。
彼のすらりとした脚は長くて、スタイルの良さを感じさせる。
俺が穿いたことのないようなパンツを着こなしていて…ってそれ部屋着?なのかな?そんなことを考えながら、突き刺すような視線に耐えていた。
「…ダッサ…」
「」
んん?
んんん?
今何か言ったか?
何かダサいとか聞こえた気がしたけど、埜はそのまま引っ越しの手伝いをしてくれた。
だるそうにしながらもきちんと手伝ってくれて、母さんとも和やかに会話をしていてちょっとホッとした気持ちになる。
ほとんどが引っ越し業者がしてくれ、あとは各自荷解きにとりかかった。
「埜の部屋のとなりを中也くんが使ってね」
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