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第8話トモダチ
「ちゅーー!俺を置いて帰るとかやめて!!」
大声で駆けてきたのは篠崎美緒 。
こいつも俺のクラスメイトで、結構話をする友達。
まだ学校に馴染めない俺に、菓子パンのドーナツをくれたいい奴だ。
駆けてきた勢いで思い切り抱きしめられて、一瞬どころか数秒息が止まった。
さすがバスケ部、身体が俺と違って硬い。
「……だ、だ…」
「美緒……中が死ぬからそれ駄目だって」
「んぁ?……あ、悪い!」
ぱっと腕が離れ呼吸が楽になる。マジ幽体離脱~になる寸前だった。
「だって美緒、普段部活じゃん。今日は…休みなのか?」
「そそ!今日は顧問の先生出張で休み!一緒に帰ろうぜ!」
大きい手の平で、ポンポン頭を叩かれてちょっと脳みそが揺れる…力の加減しろ加減を!
俺と秀多と美緒…まぁ友達ができるのは良いことだし、いじめとかそんな雰囲気のないクラスなので、転校して来た側としてはとても有難い。
しかし気に入らないことが一つあって、この2人が明らかに俺より身長が高いという事だ。
二人とも絶対180㎝以上ある…絶対ある!
でも現実を受け止めたくないので本人にはあえて身長を聞かない俺。
自称170㎝と言っている俺の嘘がばれてしまう。
良い子は身長伸びるっていうから(多分言わない)きっと俺の身長も、この数か月で少しは伸びているはずだ。
「……お、あそこに見えるイケメンはもう一人の景森くんじゃーん。忙しそうだよなー」
「もう仕事してるって…羨ましいな」
「……」
そんなことを二人が話しているのを横で聞いている俺…まだ二人にその景森が俺の弟だということを伝えてはいなかった。
「あっちとこっちの景森とのギャップ…萌える~」
「……なんで萌えるんだよ…」
「垢ぬけない中に萌えてます!これ褒めてます」
「俺も褒めてます!」
「……」
くっそーこいつら本当俺を馬鹿にしてる気がする。
確かに俺は地味だし、垢ぬけない男だと思う。
カッコいい埜とは、全然違う生き物なんだろうと思うのだ。
俺、基本ファッションとかお洒落に興味ないしなぁ……
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