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第9話 キタク
「じゃぁなー!」
そう挨拶を交わして二人と別れた。
雲行きの怪しい中、トボトボと家に向かい歩く、やっと慣れてきた帰り道……その先に小さく見える弟の背中。
あまり避けるのも良くないよな……ちゃんとコミュニケーションとらないと……兄弟なんだからな!
通学路から外れたのもあって、埜に声をかけた。
「おーい埜 」
「……」
「おーーい」
「……」
「?おーーい!埜ー!」
!
うわ!何?
Uターンしてこっち来た……しかもスゲー顔して!
「お、ま、え、な!俺の名前を叫ぶなっ!」
「仕方ないだろ…ならすぐ返事しろよ。この辺ならもういいだろ、帰り道同じなんだから」
「……っち」
「ちっ…て……」
面白くないことはわかってるけど、この明らかに変化する態度はなんなんだ。
さっきはあんなに友達に爽やかイケメンのオーラを放っておきながら、今はそのオーラも消えギスギスとした不穏な空気を醸している。
とりあえずは自分でもわかっているのか、黙って俺と歩き出した。
ちなみに埜も俺より身長が高いので、二人並ぶと少し身長差ができてちょっとムカツク。
どうして最近の男子高校生は発育がいいのか……身長が高いのか……
俺もその中に混ぜて欲しい。
埜とも身長の話はしないように心がけよう、そう誓った…
「お前、身長いくつ?」
「……」
誓った瞬間にそれかい!!!
「えーっと……170くらい…」
「は?170はないな……あっても168……か、まぁ165くらいか」
「……170あるっての」
「はは…ねえって。絶対ないってサバよみすぎだろ」
はーーー!!!こいつっめっちゃムカツク!
何だよその笑い方!
何だよその言い方!!
「な、あるっての!ここ数年で大分伸びたんだからな」
「ふーん、そらよかったな。170㎝なくても生きていけるんだし、全然いいんじゃね」
……か、完全馬鹿にしてるー!!殴りたい!
わなわなしながらマンションに着き、自分の部屋で制服から普段着へ着替える。
今日は母さんも斎さんも帰りが遅いので、俺が夕飯の支度をすることになっていた。
カレーの予定だけど、その下ごしらえを斎さんがすでにやってくれていた。
斎さんは料理が得意で、本当に得意で超美味い。
どれも美味しく感動して泣いたことがある…
ぶっちゃけ母さんが作る料理と、雲泥の差があった。
プロですかあなたは!って言うくらい美味しかったのだ。
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