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第10話 アメ

「料理は趣味だから、僕に任せてね」 斎さんはそう言っていたし、やることでストレス解消にもなると言っていたから、本当に料理が好きなんだろうと思った。 俺からしたら料理は得意じゃないから願ったり叶ったりだけど、斎さんが忙しい時はやっぱり手伝わないと申し訳ない。 カレーくらいなら俺にも作れるし…と言っても材料はすでにカットされていて、俺はそれを炒めて煮込むだけ!の簡単作業。 ……料理が趣味とか言ってみたいぜ。 そんなことを考えながら、キッチンで作業していると、埜が2階から降りてきた。 埜は俺を見るなり、嫌な顔をする。 …そんなに嫌なのか俺の事が…… 埜は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、リビングのソファに腰かけた。 「あれ?これから出かけるんじゃないの?」 「……」 「おーい」 「……うるせ、予定が変わったんだよ」 「へーそうなんだ。じゃ、洗濯物取り込んでよ」 「はぁあああ?」 「……はぁああ?じゃあなくて、雨降りそうだから早めに取り込んでおかないとヤバいって」 「そら大変じゃん、お兄ちゃんやっておいて」 「弟よ…兄ちゃんはカレーで忙しいからやって」 「俺に指図すんなって」 ……こ、こいつっううううう!!! 長い脚をソファに投げ出して、TVをつけスマホを弄る姿は、そりゃそりゃーカッコいいのかもしれないけど! 中身は小学生並み! 「だー!いいから取り込んでこいよっ!!!働けっ!」 「俺、働いてまーーーーす」 !!! その通り!! って!納得してんじゃねー俺!!! そんなこんなしてると外がみるみる暗くなり、ザーーーーーーっという雨音がしだした。 「げ!マジで降ってきた!」 足早にベランダに向かい、洗濯物を取り込む。 雨粒が大きくあっという間に景色が濡れていった。 ダッシュで何とか洗濯物を取り込むと、その様子を埜が優雅に眺めている。 「おー神業、スゲーな兄ちゃん」 プツン…… こんのガキー!!! ついに頭にきて、埜の顔面目掛け濡れた(わざと濡らした)洗濯物をペシャリと投げつけてやった。 「……ワリィ…埜のパンツ濡れたわ」 「……」 フン!手伝わないからこうなるんだっつーの! チョコミント色の埜のボクサーパンツは、濡れて少し濃いめのブルーへと変わっていた。

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