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第14話 ナカナオリ

斎さんと急いで、夕飯の支度に取り掛かった。 俺はお皿を出したり、斎さんが作ったサラダを盛ったりする簡単なお手伝い。 出来上がってきたカレーからいい匂いがしてくる。 ちょっとスパイシーな良い香りに食欲が刺激され、急にお腹が空いてきた。 キッチンにいると、二階から埜が降りて来る足音がトントンと聞こえる。 埜はリビングテーブルを布巾で拭いている俺の目の前にきて、何かを差し出した。 「?」 「これ」 「……」 「これ、着てみろ」 「え」 「いいから着てみろって」 「わ!!ちょっ…!」 またもや来ていたトレーナーを万歳状態で強引に脱がされてしまった。 「な、なんだよ!埜っ!ぶっ!!」 叫ぼうと思ったら、今度は違う服を頭から被せられて言葉に詰まる。 不思議な匂いに違和感を感じつつも、埜の手際の良さについていけず、訳も分からずされるがままになっていた。 「……んーちょっとデカいか?ギリかな」 「なにが……ってこれ…なにこれ俺のじゃない」 自分の身体がふんわりとしたモノに包まれて、違う服を着ていることに気がつく。暖かみのある優しいグレーのプルオーバーのパーカーで、胸元のペンギンのワンポイントが印象的だった。 「当たり前だろ。これ俺の……やる」 「へ」 「あのパーカーの変わり。もうこれ俺着ないから……やる」 「え、いいよ!もったいない!」 「何がもったいないんだよ」 「だってこれ高そうじゃん!ふかふかしてるし!」 そう……ふんわりとした着心地が優しく、俺が着ていたモノと肌触りが全然違うからだ。 「ふかふか?は…してないだろうけど、…まぁ高いかな。だけど俺にはちょい小さいし……ちゅ、中ならサイズ合いそうだし……あれ……破いたし……わりぃ…」 「えーー!いいの?本当に……って!!って!!!埜!ちゅうって!ちゅうって!斎さんっ」 「はいはい聞こえてるよ!中也くん名前で呼んでもらえたね。良かったね!これで仲直りだ」 「はあ?別に仲直りじゃ!……んわっ!?」 あの埜が俺の名前を呼んでくれたことが凄く嬉しくて、思い切り埜に抱き着いた。 それくらい嬉かった! それに埜が反省してるって気持ちも感じることができたのでそれも嬉しい! 「兄ちゃんは嬉しいっ!」 「あーはいはい!それちゃんと着ろよ。毎日着ろ」 「え」 「それ着てたら大分ましに見える……なんだけど……何か着せられてる感あるんだよなぁ……なぁ、父さん」 「うん、あるねぇ~」 「え”」 良く分からないけれど、俺を見ながら首をかしげる父と弟は二人とも残念そうな顔をしていた。

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