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第17話 パーカー

埜 「埜が手伝わないからだろ!自業自得だろうがっ!!っ!」 その通り! 「んなことお前がパッパとやれば済むことだろ!」 「なんで俺なんだよ!手伝いくらいしろ!って言うか!お前お前言うな馬鹿!ちゃんと中也って名前があるんだよ!」 あ? そうだったっけ? そう言えば「お前」「お前」言ってるような… 「お前みたいなダサイ奴はオ マ エで十分なんだよ!そもそもお前の着てるもの全部だっせぇ!!」 そうだ、これだこれ! 俺が一番気に入らないのは、お前の着ているその服だ! 「それ!か、関係ないだろっ!」 関係なくねぇ!!!! 段々こいつの目が涙目になってきているけれど、後には引けずそのまま無視した。 「これとかいつ買ったやつだよ。色褪せてるし裾がよれよれじゃん。捨てろよ」 そう言いながら、こいつが着ているプルオーバータイプのよれよれのパーカーを脱がそうとした。 勢いよくパーカーを上に引っ張れば、こいつは抵抗もできず万歳状態になり、上半身が丸見え状態になる。 あはは……とか笑いつつ腹筋もほどんどない白い腹に薄い胸がやたら綺麗に見えた。 「へ、腹筋もないぺたんこな腹してんな」 「ちょっ!おい!やめろって…ブファ……!」 力の違いは明らかで、あっという間に脱がせることに成功。 絶対捨てる!!マジ捨てる!! でも奪われたパーカーを取り返そうとなんとか掴んで引っ張るあいつ。 当然向こうも奪われてたまるかといった感じに引っ張るので俺も必死だ。 結構しつこい! 「おい!離せよっ!」 「嫌だ!絶対これ捨てるだろ!絶対だめ!」 「捨てるわけないいだろー!!はなせ!!」 「信じられーんっ!!」 無我夢中で引っ張り綱引き状態になっていたその時。 「こらーーー!お前ら何やってんだ!!!!」 父さんの大声がリビングに響き渡った…… ゲッ!! その瞬間…… ビリリ…… 引っ張り合っていたパーカーが耐えられず肩から裂けてしまった。 あ、 や、やば……これやばいんじゃね……あいつを見れば破けたパーカーを凝視したまま固まって動かない…… 劣化していたのだろう肩の合わせ目から盛大に破けてしまい、その無残な姿にさすがに俺もやりすぎたと内心焦る。 野暮ったい前髪の間から覗くあいつの瞳から零れる涙に思わずドキリとした。 あー!くっそ! ムカついて自分の部屋へ帰ってからも、イライラしっぱなしだ…… …… やっぱり……俺が悪いよなぁ…… 服を台無しにして傷つけた……男だけどあいつを泣かせてしまったことに対して、何故か心が罪悪感でいっぱいだった。 ダサイとか言って傷つけてる俺マジ最低…… だけど、嫌なものは嫌なんだ。そこは我慢したくない。 …… あーーーー パーカーのこと、謝らないとだよなぁ…… つか……破けるか普通…… パーカーかぁ……… 自分のベッドに寝転がりながら、何度もさえないため息を吐いた。 …… …… あ…… そして、ふと思いだしクローゼットを開けて探し物を探す。 ……あれなら、あいつでも着れるんじゃないか? 俺には少し小さくて、今着ていないモノが一着……着心地は良いはずだから、気に入ると思う。 ……よし。

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