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第19話 イイカンジ

今まで俺……寝てましたけど? って思うんだけど埜は、俺の寝癖がついた頭をぺしペしと軽く叩きながら、スウェットを着ている状態の俺を眺め「うんうん」と頷く。 俺には大きめサイズなので、首回りが毎日ズレているらしくそれを直してくれるのだ。 ……いや、これからすぐに制服に着替えるんですけどねって思うんだけど、貴重な兄弟のコミュニケーションと捉えて埜のしたいようにさせている。 それにやっぱり嬉しい。 避け合ってイライラし合っているよりも、やっぱり兄弟は仲が良い方が嬉しいなって思う。 「はは、やっぱ垢ぬけねぇな」 「」 ……まぁ上から目線は変わらないけれど、それは仕方がないと思う。 だって埜の方が容姿もファッションセンスのスキルも上だからだ。 寝起きでも弟はカッコいいし爽やかだ。 堂々とした姿勢はスラリとしているし、眠そうにしている目元は妙に色っぽい。 何をしていてもカッコいいんだなぁっていうのを改めて感じた。 「埜って、歯磨きしててもカッコいいんだな」 「げふっ!」 ぼーーーっとしながらそう言うと、盛大に歯磨き粉を噴いてむせていた。 でも、学校には一緒に登校しないし、学校内ですれ違っても無反応でそこはこれまでと変わらずにお互い過ごした。 そこが変わらなくても、気持ちは以前より全く違い、心に余裕ができた感じがする。 「うん!いい感じ」 「何がいい感じよ」 俺の独り言を拾い上げるのは美緒だ。 秀多の席に座りながらじゃがりこを食べ、スマホを弄っていた。 美緒の褐色の肌は健康的で、第二ボタンまで外した白シャツが良く似合っている。 バスケ部ってだけあってこいつも爽やかを醸していて最近知ったけど、こやつは後輩に人気があるらしい。 「えーと……い、いい感じに……伸びたなぁって…」 「……何が」 「か、髪!髪です!俺の髪!」 「あぁ…中の髪ね。長いよな切らないのか?ん」 そう言いながら食べているじゃがりこを目の前に差し出すので、それを口に銜えた。 「ン!さんく!……んー切る…と、思う……」 「はは!何だそれっ!はっきりしない返事だなぁ。あ!あれならさ、うちでカットしたらいいんじゃね?」 「え?」 「俺の兄ちゃんが美容師なんだよ。美容院やってて俺いつもそこで格安でカットしてもらうんだけど、一緒に行くか?」 「え!え!まじで!いいの?」 「まじまじ!兄ちゃんに言っておくからさ!週末に行ってサッパリしようぜー!」

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