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第21話 エランデ

「これ」 「…」 「これは?」 「…」 「じゃあこれ?」 「…」 「……以上です」 「はぁ?以上って…これしか持ってないのかよ!」 「……は、はいぃ……」 夜になり仕事から帰って来た埜に、思い切って日曜日に何を着て行ったらいいかを相談してみた。 帰宅した埜はブルゾンにTシャツに細身の黒のパンツを穿いていて、良くはわからなけどスゲーカッコ良い……それに今は耳にピアノもしていた…… 「どれも駄目」 「えー」 「俺があげたその部屋着、着ていけば?」 「え!今着てるやつ?」 「つか、パーカーもその部屋着も大き目だから中が着るといまいち……」 「そんなことわかってんだよー!」 「あ!全裸でGOしたら」 「捕まるだろ!……しいて、しいて言えばどれ……」 ぶん殴りたい気持ちを抑え、埜にアドバイスを求めた。 持っている服が少ないし、埜から見たら全部ダメなんだろうけど、今はこれしかないんだから仕方がない。 「……はぁ……100歩1000歩譲ってそれとこれ…」 「おっけー!有難うっ!埜」 「……10000歩譲ってだからな。まぁその友達も中とレベルが同じでありますように……ほら肩が出てる」 毒々しい毒を吐きつつ、俺が着ている部屋着を整えてくれるのはもう慣れてきた。 ずりりと首回りがずれて、左肩が丸見えになっている。 「……ちょっと(ちゅう)はなで肩だからズレてくんだよな……」 そんなことをブツブツ言いながら直してくれるんだけど、そんな埜からふんわりと良い香りが匂ってくる。 「?……すんすん…」 直して貰いながらその匂いが気になって、埜の首もとに鼻を近付けた。 向き合う二人の距離は近い。 体温が感じられるくらい近くでその匂いを嗅いでいると、髪の毛に埜の手が触れるのがわかった。 髪を掴まれくいっと引っ張られてしまい、引き剥がされる。 「……何してんだよ」 「…え、何か匂うなぁって思って」 髪を掴まれたままの状態で、目の前には埜の不機嫌そうな顔がアップにあり、睫毛の本数が数えらるくらい近い…… 眉間にシワが寄っていて、何か怒らせるようなこと言ったかなぁ?とか考えるけど表情から読み取ることは出来なかった。 「あ、これか」 「?」 思い立ち近くに置いてあったリュックを開け、中から何かを探しているようだ。 そしてそれを取り出すと化粧水の容器のようなものをいくつか床に転がした。 「今日デオドラントウォーターのサンプルをもらったんだ、多分これだな。帰る時に試したから」

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