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第30話 カシャッ
「え、何!?」
ベッドの上で、埜に抱き締められるような状態になっていて混乱する。
なな何でこの体勢?
訳が分からずされるがままに埜の腕の中に収まっている俺がいた。
頭に埜の頬が押し付けられ、妙にドキドキしてしまう。
「ほらじっとしてろ。髪の毛整えて……」
「え、え」
「はーい、こっち見て」
「?」
カシャッ
何故かスマホで自撮りする埜。
今のこの状態の俺らの画像が、埜のスマホに収められていた。
「はは、こんなもんか……中の変な顔うけるな」
「埜……何で今撮ったんだよ」
「まぁまぁ、ちょっと待ってろ。……よし」
「……」
抱き締められたまま、頭をペシペシと叩かれて、本当意味がわからない。
スマホを片手で弄っている埜は、何やら満足げな顔をして画面を眺め、ニヤニヤしていた。
「中が兄に見えないのは仕方ねぇな」
「悪かったな。同い年なんだから仕方ないだろ」
「同い年にも見えない件な」
「……あのな」
「中、俺が休みの時に買い物行くから」
「え」
「買 い 物。俺が中の服選んでやるから、有難いと思えよ」
「ど、どうしたの急に」
「それと美緒とは口を利かないこと。分かったか?朝は俺と一緒に登校して、帰りは俺が迎えに行くか……」
「ちょ!まった!美緒と口利くなってどういうことだよ!美緒は俺の友達でクラスメイトでそんなの無理に決まってるだろっ!それに学校一緒にって……」
「は?あんな馬鹿と友達なのか?天然ノーテンキ男とツルんで楽しいかよ。それより中、お腹空いたから飯食おうぜ」
「馬鹿って!酷っ!って引っ張るなって!!」
グイグイ引っ張られ再び一階のリビングへ行き、キッチンの冷蔵庫に入っていた斎さんお手製のオムライスをレンジで温めて食べた。
食べながら今日一日のことを話すと、やっぱり美緒のことは好きじゃないようだ。美緒と話をするなって言うのは、本当無理って抗議して何とか何とか説得……
その間、いつものようなしかめっ面が更に渋い顔をしていたけど、美容院の話とか服に関してはちゃんと聞いていてくれたので嬉しかった。
そしてすっかりと忘れていたことがひとつ……
「あのさ、埜って好きな食べ物何?」
「あ?何で」
「今日帰りがけに買ってこようと思ってたんだけど、埜に聞き忘れてた……俺疲れててすっかり抜け落ちてた。埜に色々貰ってるから、そのお礼にって思って……」
「あー別にいらねぇし。気にすんな」
「……」
「……なんだよその目……」
「……」
「……あーうざ!……これだよこれ!」
「これって……オムライス?」
……斎さんが作っておいてくれたオムライスは何回か食べたけど、とっても美味しい。
そうか埜の好物だったから、定期的に斎さんが作ってくれていたんだとそう理解した。
……これは買ってくることはできないし、俺にはレベルが高くて作れそうにない。
「……ついてる」
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