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第34話 ウデマクラ
凄く心地よい……
何だろう……このいい香りに肌触りに……
柔らかい……枕……
もそ……
柔らかい枕、動くし…
……
動く……?
「ん」
眠い瞳を開けると、目の前には綺麗な喉仏が見える。
?
誰の喉仏かと脳内で分かりつつ、目線を上にしその顔を確認すると、予想通り埜がスヤスヤと寝ていた。
首はごついのに、その顔は整っていて寝顔もカッコいいときたもんだ。
って……っていうか……?
ちょっとこれって……俺が枕にしてるのって埜の腕では……?
なんで腕枕されてるんだ?
それに埜のもう一つ、腕は包み込むように背中に回されていて、俺は身動きがとれない状態になっていた。
わ…わあああ……俺、寝てる間に何かしたかな?
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている埜は、起きそうにないし、この状態に混乱している俺は、埜から離れたい気持ちだ。
でも俺が動くと恐らく埜は目が覚めてしまうような気がする。
それはそれで申し訳ない……あーでも!
何か恥ずかしいんだけど!このくっつき加減!
思い切って控えめにぺちぺちと埜の頬を叩いて反応するか確認してみた。
「埜……埜…ちょっと」
「……ん」
「起きろ……うっ…ぁ!」
!!思い切り抱きしめられて息が詰まり、脚で思い切りカニばさみされる!
身動きが!できない!
埜の胸に思い切り顔を埋める状態になってしまって息苦しくてマジヤバいっ!
「んん……中……るさい…………ん?あぁ……大丈夫か?」
「は!だっ!大丈夫な訳ないっ!死ぬかと思った!……!」
埜がやっと覚醒して腕が緩んでくれた。
本当苦しくて酸欠状態で埜のことを殴ってやろうかと思ったのに……できなかった。
……
寝起きの埜の視線と、俺のが絡んだ時……時が止まったように息を飲んでしまう。
……自分の心臓がいつもと違い思い切り跳ねたのを感じた。
……とても……優しい瞳が、まっすぐ俺を見詰めている……
こんな埜の目、見たことない……
澄んで色っぽい埜の視線が、とても綺麗で見とれてしまったのだ。
その瞳がゆっくりと近づいてくる……
え…
ちょっと……
ま、ままって!!
……
「……は……?」
「……すぅ…………」
近づいてきた埜の顔は、俺のおでこでとまり、そのまま規則正しい寝息が再び聞こえてきた……
ね、寝てる!
……ドキドキドキドキ……
び、
びっくりしたぁ……
キス……
されるかと思った。
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