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第37話 イメージ
埜
「埜くんのお兄さん、可愛いねぇ」
「あ、そう?」
そら、可愛いさ。
「ねぇねぇ埜ー!お兄さん何組なのー?会いたーい」
「えーと、何組だったかな?階が違うんだけどな…」
てめぇが会いたいとか、ふざけんなよ。
クラスの女子から、昨日アップしたSNSの反応が返ってきて、それはそれで想定内なのでいいんだけど、中の質問をされるたびに、イライラが止まらなかった。
学校では、爽やかなイメージを崩さないように、誰とでも気さくでフレンドリーな景森埜を演じている俺。
仕事をするようになってから、更に自分のイメージを大事にするようになり、外ではかなり良い子ぶっていた。
でもそのお陰で、学校生活ではこれといったトラブルもないし、仕事も順調で、充実した高校生活が送れている。
いるんだけど、逆に脳内の荒ぶりが止まらなかった。
お前らが中を見に行ってどうすんだよ。
何ブスのクセにキャッキャはしゃいでやがんだ馬鹿。
「プライベートなことはほとんどアップしないから、反応凄いな……俺も驚いたし?マジ驚いたし」
「ま、誰にも言ってなかったからな」
俺の隣で静かに愚痴を言っているのは、友達の井ノ上真人 だ。
同じ中学出身で、去年初めて同じクラスになってから、一緒につるんでいるダチだ。
落ち着いていて冷静だし、一緒にいてもストレスにならない。
「……女子が言うように、確かに可愛いお兄さんだな……こんなに大事に抱きしめちゃって、何か俺のモノだぜいいだろ?って誰かに見せつけてる感じだよね」
「……」
「あぁ、ゴメン。俺の勝手な妄想だから気にしないで」
妙に感が良いところがあるのが面倒くさい……
それをあえて突っ込まないし、向こうからも追及はしてこない。
ついでに俺が素でないことを薄々感づいているようなのが若干ムカツク。
まぁ、別に害はないからいいけど……
「俺、今日から中と一緒に帰るようになるから……」
「へーいいけど、俺には紹介してくれるんだろう?」
「……」
「じゃないと俺の方から直接行っちゃうけど?中ちゃんとこ」
「……はぁ……わかった。わかったよ」
「いえーいヨロー!」
ふふふんと真人は満足そうな顔をしながら、自分の席に戻って行った。
朝から注目を浴びていたから、帰りはもっとだろう……
今日は予定もないから、中を連れてさっさと帰りたい。
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