39 / 99
第39話 キスシタワケ
昼休みがそろそろ終わる頃、屋上から教室に向かう階段の踊り場で、後ろにいた美緒が俺の肩をトントンと叩いた。
「あの話……」
「……」
「中はさ、俺が埜にキスした理由 、知りたいんだろ?」
「……う、うん」
「知りたい?」
「……し、知りたいよ……」
「へへへ……んーキスする理由って……わかんね?」
「……え…ぁ」
秀多が先に階段を降りていくその後ろで、そう美緒が切なそうに俺に教えてくれた。
ポンポンと頭を優しく撫でながら……
「あはは……なーんちゃって……あーキスしたはしたけど、その後すぐに思い切り埜に殴られたんだ。すげー嫌だったらしい。そりゃそうだよなー!」
「……」
「それ以来、あいつ口利いてくれないんだよねー。そのまま部活辞めて、絡むことなくなったし。まぁ……仕方ないよな。でもまさかあいつが中の弟になるとか考えてもみなかった。俺、埜に謝らないとって思ってるから。……あーでな?それはおいといて!今は俺……んんん……中にキスしたいって思ってるんだぞ?」
「あぁ……そう……」
「ちょ……中ってば聞いてる?……なんか俺に塩対応じゃね?……なんでー!」
……
……
ドキドキ………
キスする理由……その意味って……わからない奴いないだろ。
ドキン……ドキン……
美緒は埜のことを好きだってこと?
そ、そういうことだよね。
……
「おーい!お前ら二人何してんだよ!やらしいことしてんじゃないだろうな!」
「!……ヤバいばれたか!中、ほら秀多さんが一人じゃ寂しいってよ!行くぞ!おーい、聞いてるか?」
「……え、あ、お、おう!」
慌てて階段を降り、下で待っている秀多と合流した。
でも俺の頭の中は、さっきの言葉が頭から離れなくて、脳内が大変なことになっていた。
衝撃的でショックだ。
……美緒は埜のことが好きで、キスをした。
でも、殴られたってことは、埜はその気がなくて……美緒はフラれたってことになって……
……
っていうか、落ち着け二人とも男同士だぞ。
男の美緒は男の埜を好きになったってことになる。
……なるな。
美緒は……名前女子っぽいけど男だな……
埜も……男だな……
それってそれって普通にあることなのか?
秀多に聞いて……
イヤ!これ秘密だし!き、聞けない!!
どうなんだ?
どうなのさ!
誰かー!
……誰か!
教えてくれーーーーーーー!!
ともだちにシェアしよう!