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第44話 カエリミチ
「結構買ったね」
「これくらい普通だろ。本当はもっと欲しいかったけど、荷物になるから仕方ねえな」
「ま、学校の帰りだしね。……あ、これ!美味しい!」
「んだろ?」
買い物が終わる頃、喉が渇いたので帰りがけにカフェに寄り、テイクアウトしたフローズンタイプのエスプレッソ。
濃厚なクリームが入っていて、冷たくて甘すぎず苦すぎずでとても美味しい!
お洒落なカフェでの注文なんて、初めてだったからレジで思い切り慌ててしまったけれど、わからない所は埜が教えてくれた。
カップのサイズなんてさっぱりわからないし、どれも美味しそうで迷ってしまった。
「うおっ!マジ美味しい!」
「……そんなに美味いか?」
「うん!美味い!」
喉が渇いているせいもあると思うけど、甘くて冷たくて体力を消耗した身体に染みわたる美味しさだ。
埜は同じくフローズンタイプの抹茶クリームを飲んでいた。
「飲ませろ」
そう言いながら埜は、自分の手にしているドリンクを歩きながら俺の目の前に差し出す。
飲んでいいからお前のも飲ませろってこと何だろうけど、内心心がドキっとしてしまった。
え、このまま飲んでいいの?
そう戸惑いつつも、嫌がるのも変なので、勢いに任せそのままストローに口をつけ一口飲んだ。
「お、美味しい……」
思ったより、甘めのお抹茶の味が口の中に広がる。
お返しに同じように埜の前に差し出すと、カプっとストローを加える埜の口元が、少しエロく見えてしまうのは……今日の俺の脳内がキスと言うテーマに侵されていて可笑しくなっているから。
このドキドキも!そのせいなのだ。
きっと今日の美緒の話がなければ、こんなに動揺しないはず!
どうしよう!埜とかかか間接キスだー!とかって意識しなかったのに!
「……にっが」
少し顔をしかめながら、埜が一言呟いてすぐに自分の抹茶を飲んでしまった。
あああ飲んだ……!どうしよう!
帰り道の歩道で謎の羞恥がこみ上げる。
そして自分のドリンクを飲むのに思い切り動揺してしまう俺ってっ!俺って!
美味しいし溶けるから飲むけど!
喉の渇きには勝てず、間接キスだーと思いつつも、あっという間に飲み干してしまう自分がいた。
まさか、俺以上に埜がドキドキしていたなんで知る由もなかったけど。
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