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第45話 ホントウノワケ
埜に聞かないと。
美緒とのこと……二人がキスしたことがとても気になって仕方がなかった。
本人が目の前にいるんだ、聞くくらいどうってことないだろう。
家帰り自室で埜から貰ったパーカーに着替える。
このパーカーは長袖だ。
暑い季節になってきたので、半袖シャツでもいい気がするけど、これを着ていると何故か落ち着くようになってしまった。
リビングへ行き、キッチンで冷蔵庫からペットボトルの緑茶を取り出す。コップに注いで飲み干したところに埜が二階から降りてきた。
「埜、あのさ」
「ん?あ、俺にもお茶入れて」
そう言われたので、埜の分のお茶をコップに入れソファーに横になっている埜に手渡す。
埜も喉が渇いていたのか身体を起こして、一気にそのお茶を飲み干した。
その様子を隣に座りながらじぃっと見ていると、埜がその視線に気がつき無意識に眉間に皺をよせる。
「……何」
「あーあのさ、今日聞いたんだけど」
「聞いた?何を」
「うん、えーと美緒から!それが気になってさ、埜に聞きたいんだけど」
「……なんだよ」
「……埜と美緒……キスしたことがあるって聞いたんだけど……本当?」
「は」
「キスしたってことはさ、美緒は埜のことが好きだってことだよね?」
「……」
「す…好きだから埜にキスしたってことだろ?今も美緒は埜のこと好きなのかな?埜が殴ったってことは頭にきたんだよね?でも男が男にキスするって、凄く凄く勇気がいると思うんだけど……その当時の二人って、どどどどんな感じだったの?埜はキスされて嫌だった?でも美緒だって埜への想いがあったからこそ!キキキスしちゃったんだよね!それをさ、俺だけに教えてくれたってことは他の奴には秘密ってことで!……そうか、てことは美緒はまだ埜のこと好きだってことなのかな?俺に協力して欲しいってこと?めっちゃ埜本人に喋っ…てるけど俺!ああああの俺どうしたら!……あの!ンいっ!」
ボカっと頭を叩かれて我に返る。
目の前の埜は仏頂面&眉間に皺でとても不機嫌そうにしていた。
……
あ……っと、あれ……?
ヤバ……怒ってる?聞いちゃ駄目だった系?
「……うるせーな。なんだよ。キスしたらなんだっていうんだよ」
「え」
「はぁ……あんな野郎にキスされて嬉しいと思うか?あいつにいきなりキスされたら……しかも部員の前でだぜ?そりゃキレるに決まってんだろ」
「え」
部員の前?
「美緒が俺のこと好き?そんなのあるわけねえだろ。当時の部活の先輩にヤレって言われてあいつはしたんだよ。先輩の彼女が俺に惚れたのが原因で別れたとかなんとかで……俺に対しての個人的に嫌がらせがしたかったんだと。それに秘密なんかじゃねえし。皆知ってるし」
「……へ」
むにゅっと頬っぺたを抓られて、横に縦に引っ張られて若干痛いけど、そんなのも気にならない予想外の言葉に脳内が混乱していた。
無表情の埜の顔は、そんな俺のアホ顔を可哀想なものでも見るように見つめている。
「中は美緒に揶揄われたんだよ。それ聞いたの……俺と兄弟だからってわかってからだろ?」
「……は、はひ……」
「だろ」
「ま、マジで……」
「マジだ」
!!!
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