45 / 99

第45話 ホントウノワケ

埜に聞かないと。 美緒とのこと……二人がキスしたことがとても気になって仕方がなかった。 本人が目の前にいるんだ、聞くくらいどうってことないだろう。 家帰り自室で埜から貰ったパーカーに着替える。 このパーカーは長袖だ。 暑い季節になってきたので、半袖シャツでもいい気がするけど、これを着ていると何故か落ち着くようになってしまった。 リビングへ行き、キッチンで冷蔵庫からペットボトルの緑茶を取り出す。コップに注いで飲み干したところに埜が二階から降りてきた。 「埜、あのさ」 「ん?あ、俺にもお茶入れて」 そう言われたので、埜の分のお茶をコップに入れソファーに横になっている埜に手渡す。 埜も喉が渇いていたのか身体を起こして、一気にそのお茶を飲み干した。 その様子を隣に座りながらじぃっと見ていると、埜がその視線に気がつき無意識に眉間に皺をよせる。 「……何」 「あーあのさ、今日聞いたんだけど」 「聞いた?何を」 「うん、えーと美緒から!それが気になってさ、埜に聞きたいんだけど」 「……なんだよ」 「……埜と美緒……キスしたことがあるって聞いたんだけど……本当?」 「は」 「キスしたってことはさ、美緒は埜のことが好きだってことだよね?」 「……」 「す…好きだから埜にキスしたってことだろ?今も美緒は埜のこと好きなのかな?埜が殴ったってことは頭にきたんだよね?でも男が男にキスするって、凄く凄く勇気がいると思うんだけど……その当時の二人って、どどどどんな感じだったの?埜はキスされて嫌だった?でも美緒だって埜への想いがあったからこそ!キキキスしちゃったんだよね!それをさ、俺だけに教えてくれたってことは他の奴には秘密ってことで!……そうか、てことは美緒はまだ埜のこと好きだってことなのかな?俺に協力して欲しいってこと?めっちゃ埜本人に喋っ…てるけど俺!ああああの俺どうしたら!……あの!ンいっ!」 ボカっと頭を叩かれて我に返る。 目の前の埜は仏頂面&眉間に皺でとても不機嫌そうにしていた。 …… あ……っと、あれ……? ヤバ……怒ってる?聞いちゃ駄目だった系? 「……うるせーな。なんだよ。キスしたらなんだっていうんだよ」 「え」 「はぁ……あんな野郎にキスされて嬉しいと思うか?あいつにいきなりキスされたら……しかも部員の前でだぜ?そりゃキレるに決まってんだろ」 「え」 部員の前? 「美緒が俺のこと好き?そんなのあるわけねえだろ。当時の部活の先輩にヤレって言われてあいつはしたんだよ。先輩の彼女が俺に惚れたのが原因で別れたとかなんとかで……俺に対しての個人的に嫌がらせがしたかったんだと。それに秘密なんかじゃねえし。皆知ってるし」 「……へ」 むにゅっと頬っぺたを抓られて、横に縦に引っ張られて若干痛いけど、そんなのも気にならない予想外の言葉に脳内が混乱していた。 無表情の埜の顔は、そんな俺のアホ顔を可哀想なものでも見るように見つめている。 「中は美緒に揶揄われたんだよ。それ聞いたの……俺と兄弟だからってわかってからだろ?」 「……は、はひ……」 「だろ」 「ま、マジで……」 「マジだ」 !!!

ともだちにシェアしよう!