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第54話 アァ……
「37度4分……」
「……」
「中ちゃん大丈夫?熱出すの久しぶりね。ちゃんと……」
「ちゃんと寝てろ。寒くないか?」
「ん、うん……大丈夫……」
熱を測ってみたら予想外に発熱していた。
今は嘘ではなくて頭痛もあって気だるい。
母さんと埜が俺の部屋に来て心配そうにしている。斎さんも仕事から帰って来て、俺がこんな状態で食欲もないとわかると、これから熱上がるかもしれない!って慌ててヨーグルトやスポドリを買いに行ってしまった。
「今晩休んだら熱下がるだろうからちゃんと寝てろ……」
「そうね、疲れが溜まってたのかもしれないしゆっくり休みなさい」
「ん」
額に冷えピタを貼られ、多めに毛布を掛けられてちょっと重苦しい……
これは母さんよりも早く、埜がしてくれたことだ。
部屋の電気が消されて、二人が下へ降りて行くのがわかると、とたんに身体から力が抜けていく。
はぁ……ゴメン母さん斎さん、埜……心配され迷惑かけてしまった。
ズキズキする痛みがツラくて考えることが億劫になってくる。
でも自然と涙が出てきてしまい、止めることかできない。
……ボーっと部屋の天井を見つめていると、全身から力が抜けて行く気がした。
……はぁ……
情けないな……
どうしたんだ俺。
さっきまで埜に会いたくなかったのに、今は埜に会いたくて側に居て欲しくてたまらない。
瞬きをすると目尻から涙が零れる。
ゴメン埜……
あの雑誌に載っていた埜が嫌だったんだ。
凄く凄く嫌だった。
見ていて急降下で不機嫌になっていく自分がいて、恥ずかしくなってしまった。
そんな自分がみっともなくて、なんで俺みたいな奴がこんな気持ちになってんだって思ったって……あんなに可愛いモデルの子にも対しても申し訳なく思えてしまった。本当に付き合ってるわけじゃないのに面白くなくて……ズキッと心が痛かった。
はぁ……
……兄弟って……大変だ……仲が良すぎるのも駄目なんだろうか……
第一埜は俺の弟だけど、モデルをしている埜には沢山のファンがいて皆の埜だ。口は悪いし態度もデカいけど、ツッコミも容赦ないけど、ダメ出しも凄いけど、俺だけが独り占めにしていいわけではない。
でも!
俺の大好きな弟であって……
兄としてはやっぱり大事なおと……うと……
……
……ん?大好きな……?
流れる涙が耳朶を伝い、ぽたりと枕に落ちるのがわかった。
ジワリと枕が濡れる……
穴が開くくらい天井をガン見していた視線は、無意識にあるものを探し宙をさまよう。
暗い部屋の壁に掛けられた……プルオーバータイプのパーカーにはペンギンのワンポイントが胸に付いている。
……
あ、
あぁ……
あーーーそっか……あはは……
俺……
埜のこと……大好きなんだ。
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