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第55話 オマエ……ナァ……
埜
……
打ち合わせを済ませ帰宅すると、奈津子さんが笑顔で迎えてくれた。
中の気配もあって当然「おかえりなさい」で迎えてくれると思ったにそれがなく、バタバタと二階へ駆けあがる足音。
……?
は?なんだあいつ。
奈津子さんが呼んでも返事はなく完全無視。
……これは様子がおかしい。
調子こいて毎日キスしたのが原因か?イヤ……そんな感じではないし、それが原因だとしたら中のくせにいい度胸してんな……あ、ひょっとしたら美緒とまた何かあったか……!
そう思いドスドスと足音立て中の部屋へと向かった。
布団にくるまっていて表情はわからないが、中が俺を避けているのは明らかだ。
布団にくるまっている状態の中も可愛いとか思うけど、避けられているようなその態度は気に食わない……なので一気に布団を引きはがす。
仮病と思いきや予想外に中の顔が赤くて触れてみたら熱っぽい。
……マジかと急に心配になりつつも、中はどこか浮かない表情で視線を合わせようとしなかった。
しかしその顔がなんとも愛おしくて、そそられてしまい、キスがしたくなってしまう。
……ちっ……
したいのをグッと堪えて体温計を取りに戻った。
そのあとはリアル熱があったので、急いで処置できることをしてやる。
こうなったら休ませるのが一番だ。仕方ない……追求するのは明日にしてやるか。
「何か変なものでも食べたのかな、中の奴」
「中ちゃん?そんな変なもの食べてなかったけど……さっきまで一緒に埜ちゃんの雑誌見てその時は元気だったんだから」
「あぁ……これ」
雑誌の最新号を手に取り、ペラペラと捲り自信の掲載されているページに目を通した。
……ん、
あいつもしかして、
これ見て……
……
ははは……核心はないけど無駄にニヤける俺。
掲載ページを眺めつつ無意識に自分の鼻を何気なく摘まんでみたりする。
中の俺に対する気持ちは……ぶっちゃけわからない。
あいつは俺がキスをしても何も言わないし俺からもあえて聞かない。
毎回するたび大いに戸惑ってるのはわかるけれど、イヤでないことは態度でわかる。
唇を重ねている時間が以前より少し長いのは中が俺に身を委ねているからだ。触れるだけのキスなのに、あいつは自力で立っていられないらしい。
……まさか、まさか外国の挨拶代わりのキスだとか流石のあいつも考えてたりはしないだろうけど、もしこれを見て少しでも嫉妬してくれていたら……それが原因でああやって拗ねているんだとしたら、スゲー嬉しいんだけど。
まぁ具合が悪いのは確かなので、しっかり休ませてあげたほうがいい。あとは奈津子さんに任せてそっとしておいてやることにした。
0時、寝る前に少し中の様子を見たくて、そっと部屋の様子を伺った。
暗い部屋は静かで、どうやらちゃんと寝れているようだった。
やれやれ、この調子なら明日は熱も下がっているだろうとホッと一安心し、中の寝顔が見たくてベッドに近づいた。
ん
あれ?
まてまて待て……
……
お前……なぁ……
なんで俺があげたパーカー着て寝てんだよ。暑いだろ……
さっきまで普通に半袖Tシャツだったはずなのに……バカ野郎……
中はパーカーのフードを頭まですっぽりと被り、横向きでスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。
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