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第57話 ヨクアサ
「スゲーーー寝た……」
次の日の朝喉の渇きを覚えつつ目が覚めた。
パーカーを着ていたせいで汗を汗を掻いたみたいで喉がカラカラだ。
暑いのでパーカーから半袖Tシャツに着替え、母さんが置いてくれたスポドリのペットボトルを一気にごくごく飲み干す。
昨日の頭痛はどこへやら……痛みは治まり逆にスッキリしていた。瞼が重いのは泣いたせいだろう。それでも体調は良くなったと思われる。
カーテンを開けると眩しい日が射し込んできて、うわぁ……いい天気だ……
「中、入るぞ」
コンコンと扉がノックがされ、心臓が跳ね上がる。寝間着姿の埜が入ってきた。相変わらず寝起きでも髪が乱れていてもカッコいい……
「……おはよう。どうだ?」
「おはよ……何か熱下がったみたい」
「そか……ま、熱測れ」
「う、うん」
埜の手から体温計を受け取りアラームが鳴るのをまつ。
……
昨日と今日の埜は全然変わらないけれど、何となく……イヤ……何となくじゃなく超気まずい……
昨日埜にした態度のこともそうだけど、自分の埜に対する気持ちを知ってしまったからだ。
埜のことが……弟のことが大好きって……絶対おかしいよな。
これは特別な気持ちなんだと気がついてしまった。ないことになんてできない……どうすることもできない。
埜にこの気持ちを知られたら絶対気持ち悪がられる……
今度こそ後戻りできないくらいボコボコにされてしまうかもしれない。
折角今まで築き上げてきた兄弟関係が台無しになってしまう。
そんなの……イヤだ。
ピピピ……
体温計が鳴ると俺よりも早く埜が動き、それを取り上げてしまった。
「……あーーちょっとまだ微熱あんな。今日は学校休め中」
「え、でも俺頭痛治まったしだいじょ……」
「大丈夫じゃねぇよ!大事をとって今日は休め。……無理すんな。いいな」
「う、うん……」
半ば強引に学校を休みことになってしまった。
頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でられる。乱暴なのに髪はぼさぼさにされているのに……嬉しい嬉しいって思ってしまう。も、もっとして!
……!!
「ちょっ!もうやめて!」
パシッとその手を払った。
嬉しいけどっ!これ以上は……胸が張り裂けそうで……駄目だ!
「……」
「ぁ……ゴ、ゴメン……ちょっと俺また寝るわ」
だ駄目だ、埜の顔を見てられない。
絶対こいつおかしいって思われているはず。
気まずい雰囲気で……でもどうすることもできないままベッドに横になった。
しかしいつもなら怒るだろう埜は、特にアクションを起こすことなく、そのまま無言で部屋を出て行ってしまった。
あぁ……
心配してくれていたのに、その気持ちを台無しにしてしまった。
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