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第58話 ツラァ……
そろそろ埜が、家を出る時間だ……
スマホ画面を眺め、表示されている時間を確認しベッドからのそりと身体を起こした。
実際体調は良く、お腹も空いている。
でも……埜と鉢合わせしたくなくて一階に下りられずにいた。
窓の外を眺めれば、うちのマンション前の景色を眺めることができる。
天気は快晴。
窓を開ければ、爽やかな風が部屋に流れ心地良かった。
……わ、眩しい……
柔らかな風を感じながら、なんとなく埜が通学路に出て来るのを待つ。
ん……
んん?
暫くすると二人の女子高生が歩いて来るのが見えた。
うちの学校の女子だ。
……
あ、
あの子……見覚えある……
埜の……
埜のこと好きだって俺に言いに来た子だ……
あの子がどうして?
……あぁ……
埜に会いに来た?
そか……直接告白しに来たのかもしれない……
じっと眺め、やっぱり俺に会いに来た子に間違いなかった。
もう一人はその子の友達だろうな……
爽やかな心地が一変するのがわかった。
ドキン……ドキン……
な、なんだ……
凄くイヤなんだけど……
ど
どどどどうしよう……
部屋で一人突っ立ったまま、盛大に焦りまくる自分がいた。
埜を待っているのは明らかだけど、埜は知っているのかな?
もしかして待ち合わせしてるとか?
埜はあの子に告白されたら……
どうする?
やっぱり嬉しいのかな?
あの子、可愛いしなぁ……ま、ま万が一埜も好きになっちゃたりして……つ、つ付き合ってしまったりして?
埜カッコいいし、あの子可愛いし、お似合いのカップル誕生で周囲からも羨ましがられて、それはそれは素敵な高校生活をエンジョイできるだろう。
そして雑誌に載ってたように、お手手を恋人繋ぎなんかして、爽やかデートをするんだろうな。
電車のなかで座席に座ってるあの子の頭とかポンポンしちゃったりなんかして、甘い雰囲気醸しちゃったりなんかしてさ!
帰りの別れ際に離れたくないね……そうだね……まだ一緒にいたい……あと少しだけ……仕方ないナァ……とかとか言って二人は寄り添い……あまーーい顔してキスをしたり……ってあー!
あははなんて理想的!
寝取り寝取られ経験済みなら、埜はその先のエッチィなことも余裕にこなしてしまうんだろうな!はーーぁ!さっすが俺の自慢の弟だっ!!
……
……って……
……って……
ツラァ……
だけど、俺はお兄ちゃんだ。
その関係に踏み込むことはできない。
幸せになって……埜……
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