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第59話 ……ン、アレ?

埜 そもそも何で俺経由でそんなことを言ってきたんだ? 中に直接また連絡すればいい話だろ? 女子のすることは良くわかないとか思いつつ……どうせ何か他に下心があるんだろうと思った。 放課後は予定があると返信したらじゃぁ、朝一緒に学校行こうよ!ってことになった。 ……? 必死か?お前ら家どこだよ? とか突っ込みしたかったけど、まぁいいかとOKした。 それで今日は中を休ませたんだ。 てめぇらと一緒に中を登校なんてさせるかよ。 俺だけが会って、その子に中には他に好きな奴がいるとか言って諦めさせればいいんだ…… その好きな奴って俺のことなんだけどな! てめぇなんかにやるかよバーカ! ……とは言わないけど、そう叫びたい気持ちだ。 今朝の中は体温も平熱に下がり、体調が戻ったようなのでホッとした。 平熱だと気づかれる前に体温計を本人から押収できたし。 今日はあいつは学校に来なくていい……つかずっと行かなくてもいい。離れていると心配だし。俺とクラスが一緒だったら良かったのに……せめて同じ階だったらよかったのにとか思ってしまう。 もう次キスしたら止まんねぇかも……中の頭を撫でた時、この手を払いのけられたときムカついたのに何もアクション出来なかった。 真っ赤になっている中の顔が必死で可愛かった。「俺、埜のこと好き」とか一言言ってくれたら……俺はキスして抱きしめて「俺も……」って囁いてやるのに…… ……あーなんだ?このアホな妄想!駄目だ、んなことされたら俺が緊張するわクソ。 とりあえず……あいつらが家に来る前に準備しておかないと…… マンション前でと言ったけど、遅れたら家まで迎えにしてしまうかもしれない。 そうしたら中に気づかれてしまうかも。 そうなったら面倒くさい……早めに準備をし、家を出た。 「あ、景森ー!おはようー!」 「景森くん。お、おはようございます」 「おはよう!悪い!今日中さぁ具合悪くて学校休むって」 クラスメイトの顔見知りの女子……の、隣にいるのが中に告った奴か…… よくも俺のモノにそんなことをしてくれたな……とイライラしてきてしまう。 「えー!何そうなの?中也くん大丈夫ー?」 「あの!……景森くん……風邪とかですか?」 「んー熱あったからそうかも知れない……だから……」 「えーそうなんだぁ……残念って……ん、あれ?」 「ねね、あれ、景森くん……だよね?」 「え」 女子達が指さす方向、後ろを振り向くとダッシュで走って来る男子…… Tシャツにハーフパンツ姿の中が、一生懸命こちらに向かって走って来るじゃないか。 は?どうした?つかその薄着姿ヤバいから……太腿白いから! 「埜ーーっ!!ま、ま待って!」 息を切らせた中にガッシリ腕と掴まれて、マンションの方に引きずられる。 女子たちは呆気に取られ、呆然とこちらを眺めていた。 自宅の玄関まで連れてこられて頭が混乱する。混乱すると同時に途中から謎に胸が熱くなってしまった。こんなに必死になる中は見たことなかったからだ。 中はダッシュしてきたのか呼吸が荒い。 「……な、なんだよお前」 「はぁ……はぁ……な、埜……?……あ!えっ!俺!?なにして」 俺の顔を見つめ我に返ったのか中の顔が一気に赤くなる。 「……」 「……えと……あの…………あの!」 「……」 「……その……ええと」 「……」 何だよ…… トン…… …… 俺の顔を見ようとしない中は、そのままその顔をゆっくりと俺の胸に押し付けてきた。 そしてそのまま動こうとしない…… 薄い肩が、呼吸するたびにゆっくりと上下し、両手でギュッとワイシャツの端を握りしめている。 固まった俺はよろめき、背負っていたリュックは玄関の扉に当たりズリリと擦れる。 ワイシャツ越しに伝わってくる中の体温が、やけに熱く感じた。 「……い、いって……らっしゃい」 「………」 あ、俺の心臓とまったわ。

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