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第62話 ……ヤット
「……やっと言ったな……」
「はぁ……はぁ……な、何……」
「はは……何……俺のこと……大好きだって?」
「……」
は?
え、
俺なんか言った?
一気に血の気がひく……
ヤバいと思った瞬間、はむっと……キスをされた。直ぐに離れて……またキスをされる。
今度は角度を変えて……何度も……
え、な、なんで?
混乱しつつも、久しぶりの埜のキスは嬉しくて、脳内の怒りが薄れていってしまう。
押さえられている俺の手首から力が抜けると、埜は手のひらを重ね指を絡めてきた。
埜は俺に馬乗りになったままキスを続けた。
触れるだけのキスを何度も繰り返し、そのうち唇をペロリと舌で舐められた。
それを合図に埜の舌がするりと口内に侵入し、俺の舌と優しく触れ合う。
その感触に驚きつつ口を少し開けると、みるみる今までとは違う深いキスへと変わっていった。
ねっとりと触れ合う舌の感触と、互いの唾液が混ざり合う……こ、この……ぶっ飛ぶような行為に!俺の身体から力が抜け、脳内は真っ白だ。
「……ん……な、埜……」
「……」
やっと離れた埜の唇に視線をやると、唾液で濡れて艶めいていて……やたらエロい……ちょっと待て考えろ考えろ?
どどどうして……どうして、今こうなってる?
「埜?な、なんで……」
「……言っとくけどな。これが挨拶のキスだとか思ってたらマジぶっ飛ばすぞ」
「……」
「色々ツッコミどころのある告白だったけど。それは置いといて、とりあえず……ほら起きろ」
「う、わっ!」
強引に起こされ、奥の埜の部屋へ……
そのまま埜のベッドへと押し倒された。
さっきのフローリングの廊下なんかより当然ふかふかで背中は痛くない……けど……
仏頂面の埜は俺の上に覆い被さり俺の顔をじっと見つめつている。その視線の方が痛くてドキドキしてしまう……
……は、
さっきのキスといい……この状況といい、さすがになにか起きてしまいそうな状況で、俺は心臓バクバクでどうしたらいいのだろう。
「……っとに……鈍いのもそこまできたらマジ尊敬できるレベルだな」
「……あの……埜」
「はは、そんなに俺のこと大好きだったのかお前」
「……だ、だだだったら……どうなんだよ。それに!……お、お前って言うなって」
「はいはい中さん。だったら?……んなの決まってんだろ」
頬に触れてくる埜の手……ゆっくりと撫でてくれて、ちょっと埜じゃないような優しい雰囲気に心がキュっとなってしまう。
は、はひ………
し、死にそう。
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