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第76話 ヒィ!
埜
中が「え!そうなの?」って意外そうな顔をしたのがハッキリとわかり、イラっとしたけれど、嘘ではない。
……
……つーか、皆俺のこと何だと思ってんだ?
どうせ経験豊富な、だらしない奴とかって思われてんだろう。
確かに俺、モデルやる前からモテたし、仲いい女とそれっぽい雰囲気になったりもしたけど、そいつらとセックスしたいとは思わなかった。
……
好きでもない奴と、気持ち悪いくてできるかよ。
迫ってくる時点でひくっつーの。
それにそんなにポンポン好きな奴できねぇし!
小学のガキの頃に、気になるクラスメイトがいて、ソワソワした時がMAXだった気がする。
性欲が無いわけじゃないけど、するならちゃんと惚れた奴としたい。
……これ普通だと思うんだけど違うのか?
周囲の奴等からは今まで何人とヤったことあるかとか、モテるから女には困らないだろー?とか好き勝手言ってるけど、バカじゃねって思う。
何気にダチの真人の方がそっちに関しては経験豊富だ。
あいつはなに食わぬ顔して女子に手を出すのが上手いけど、真似したいとは思わない。
まぁ、俺の場合メチャクチャ抱きたいって思ったのは女じゃなくて男だったけど……
目の前で「初めてなんて嘘だろ!」みたいな顔して俺のこと見つめている中が、バカみたいに可愛く思えた。中が童貞なのは100%確実だったけど、まさかの俺もってのは誰も予想していないだろう。
「何だよその顔……文句あんのか?」
「え、いやだって……あんな」
「あんな?」
「あんなことって言うか、な慣れてる感じがして……はン……」
濡れた中の前髪を掻き分けてやり、顎を軽く上げてキスをしてやると、少し甘い吐息が零れる。
少しキスに慣れた証拠だと受け止めて、濡れた頭部をよしよししてやった。
経験なんていらねぇし。
十分キスを堪能してからバスルームを出て、中の身体を拭いてやる。
「あのな、俺そんなくだらない女とセックスするとかありえねぇし。したいって思った奴としかしねぇんだよ。わかったか」
「……そ、そうなんだ」
「ったく……」
ゴシゴシと中の頭をバスタオルで拭いてやる。
中はされるがままにじっと俺の前に立っているが、その身体には俺のつけた痕が点々と残っていて我ながらやりすぎた気がした。
それでも中との初めてのセックスに興奮し、止まらなかったから仕方ない……次回から気を付けよう……うむうむ……そんなことを考えていると、いきなり中が抱き着いてきた。
「でででも埜も初めてで、俺スゲー嬉しい!埜大好きっ!」
ひぃ!
「お、俺も大好きだ!!」って叫びたかったけど、素直じゃない俺がそんなこと言えるはずもなく。
「あーそうかよ!お前は一生童貞でいろバーカ」
……そう言い抱きしめながら、ぺちぺちと中の頭を叩き続けた。
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