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第78話 ダサイシタギ

「中が考えると、変な方向にいきそうだからやめろ」 「だ、だって!普通の兄弟じゃなくなっちゃったからさ」 「普通の兄弟ってなんだよ。中が俺のお兄ちゃんって時点で普通の兄弟じゃねーし?あんなイケナイことして、今更何言ってんだよ?って感じ?」 「う……そ、それは……そうです……」 「後悔してんのかよ」 「は?してない……よ」 埜のそばに近寄り、埜の胸におでこを擦りつけると、痛いくらい抱きしめられて息が止まりそうになる。二人の身体が密着して心臓の音が言聞こえるくらい、このままくっついてしまうんじゃないかっていうくらいだ。苦しいけど……あったかいぃ…… 「中……覚悟しとけよ」 「……え」 「これから、お兄ちゃんのこと、いっぱい抱くからな。というわけで!まずはこのダサい下着捨てるか」 「……ちょ!なんでそういう話になんだよ!」 抱きしめていた埜の手が、いつの間にか俺のズボンのなかに侵入し下着の上から尻を揉んでいた。いたって普通のグレーのボクサーパンツのどこが駄目なのかさっぱりわからない。 「もっと色のついたのに変えろや。地味だぜ地味」 「下着なんてどれでもいいだろ!誰も見ないんだから」 「はい、俺が見るー」 「……そ!」 そうだけどー!!!そうかもしれないけど!! 埜の顔はいつも通り意地悪にニヤニヤと笑っていて頭にきたけれど、これに関しては埜には逆らえず、今度の休みに下着を買いに行くことになってしまった。 ……結構楽しそうにしている埜と、戸惑う俺。 でもこういう我儘で強引な埜の性格は俺にはないので、ちょっと憧れるなぁ。 それからは今まで通りのように過ごした。 二人で軽く昼飯を食べてダラダラして、仕事から両親が帰って来てからは四人で食卓を囲み、いつも通りの景森家の時が流れる。 埜は登校途中に体調が悪くなり、帰ってきてしまったと理由を付けて母さんに話ていた。 埜のことを心配する母さんを見ながら、母さんゴメン……埜と今日エッチなことしてましたゴメンなさい!そう心のなかで呟いていた。 でも母さん。 俺、埜のこと大好きなんだ…… それを言葉にして親に伝えられる日がいつか来るんだろうか。 この先の事とか、色々考えてしまう俺の脳内だったけど、埜に言われた通り深く考えないように努めた。 それだけ沢山考えても、結局答えは変わらないからだ。 ずっとずっと埜と一緒に居たい……

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