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第86話 [番外編] 早起きをして4
ベッドの軋む音がおさまり、しばらく互いの呼吸だけが聞こえる。
首筋にぐりぐりと顔を押し付けられるので、その頭を優しく撫でた。
「……埜」
「あー満足」
「ぅ!あ、埜またここにつけただろ!ここだと……キスマーク服から見えるんだって」
「……うるせ。すぐ消えるだろ」
「もう……」
仏頂面でもやっぱりカッコいいし、乱れた髪ですら素敵に見えてきてしまう埜は、首筋につけた痣に対しても全く悪びれずニヤニヤを笑みを浮かべている。
ズルリと俺のなかから引き抜くと、俺の汚れた下っ腹を綺麗に拭き最後にそこにキスをした。
「本当はこのなかにぶちまけたいんだけど、仕方ないよな。後始末しなきゃだしな」
「!ば、バカ」
精液が入ったゴムを外してキュッと結び、ちり紙に包んでゴミ箱に捨てる。
そして俺から剥ぎ取った下着とスウェットを拾い上げてくれ、それを受け取りもそもそと穿く。
俺の下着はというと、綺麗なサーモンピンク色のボクサーパンツだ。水色の水玉模様が入っている。
拘る弟のおかげで今まで穿いていた地味な下着はすべて処分され、その代わりにカラフルなボクサーパンツが俺の下半身を守ってくれていた。
……全然守ってくれてない気がするけど……
着替え終えた俺を当然のように抱きかかえて横になる。
「ふぁぁまだ全然寝れんじゃん、寝るぞ」
「……眠気も吹っ飛んだよもう」
「んあ?あぁ吹っ飛ぶくらい気持ち良かった?」
「ちがっ!」
横でやっぱりニヤニヤしている埜は眠そうな瞳で俺を見詰めている。
言ってることは意地悪なのに、腰に回された手は俺の身体を気遣うように腰を撫でてくれているし、向けられている視線は優しいから言いたい文句も言えなくなってしまう。
あったかいなぁ……
「……あのメッセージ……気がつかなかったらどうしたのさ」
「あ?でも気がついたろ?」
「そうだけど」
「じゃ、いいじゃん」
「だけどさ……よ、呼びに……」
「……」
「呼びに来た方が……確実じゃん……隣の部屋なんだから」
「……ん、んーーー?あぁ……そうだな」
「……うん」
「……」
「……」
「お!お休みっ!!」
「あー何何今の?一回じゃ足りなかったか中?もう一回やっとくか?」
「しないっ!寝るよ!寝る!!」
「顔真っ赤だぞバーカ」
言ってる途中で恥ずかしくなってしまい埜にからかわれてしまった。
だー!言ってる自分が本当恥ずかしい!
しばらく埜のニヤけ声とワチャワチャ格闘していたけれど、お互い眠気には勝てなかったようでそのうちにどちらともなく静かになった。
向き合うように横になり、スースーと寝息が聞こえる。
埜の胸に顔を埋めるように寝ている俺は、緩やかに伝わる幸せなぬくもりを感じながら、八時過ぎまで気持ちよく爆睡したのだった。
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