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第89話 景森家のクリスマス2
「あー!ちょっと!そんなに攻撃してこないで!」
「はぁ?してねーし!おらおら死ね死ね!!」
「ぎゃーーー!!!埜ひっど!って、あーーゴメン。クリティカルヒットしたわ。やっりーー!!!」
「……こんのークソ野郎っっ!!くたばれっ!!」
掛布団や毛布を自分たちの部屋から持ってきてそれに包まりながら、テレビの前で叫ぶ俺たち。
既に宴は終わり、一部の間接照明だけを灯しているので、家の中は薄暗い。
リビングの隅に置かれたクリスマスツリーだけがキラキラと輝き、その存在を主張していた。
「埜くん、中ちゃん先に上に上がるわよ?風邪引かないようにね。お休み~」
「「はーい!おっ休み~!」」
母さんが上に上がり、寝室のドアがパタンと閉まる音が聞こえた。
……俺たちの気遣いがどういう効果があるかはわからないけど、少しは夫婦水入らずの時間を過ごしてもらえたらいいなぁと思った。
「埜が教えてくれなかったら俺全然気がつかなかったよ。埜ありがと!」
「別に~」
「これで本当に兄弟ができたらマジ凄いね!」
「はは、それはそれで確かに凄いけど」
「うんうん」
「……何かお前忘れてねぇ?」
「ん?」
「ここにもカップルがいること」
「え」
テレビ画面を気にしながら隣の埜の方を見ると、埜の顔が近づき俺にキスをしてきた。
……わ……わわわ!
っ!
顎を固定され、肩を抱かれてがっつりキスをされる。
は、離れない!
埜の体温があたたかいし、シャンプーの匂いが一層濃く香ってきて、クラクラしてきてしまう。
「ふぅ……んっ……」
鼻から抜けた声がちょっとエッチな感じになってしまい。
恥ずかしくなってきてしまった。
埜の腕が一層俺を強く抱きしめゆっくりと床に押し倒される。
角度を変えて口内を攻めてくる埜の舌に翻弄され、既にゲームどころではない。
コントローラーが手元から離れてしまうとその手は、当然ように埜の髪に触れて優しく撫でる。
キスは嬉しいけど、もうちょっと落ち着いて……宥めるように落ち着かせるように埜の髪を撫でた。
……でも、当然ながら全く効果はない。
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