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第96話バレンタイン4
「埜おかえりー!」
パタパタと中が玄関まで出迎えてきた。
中は既に風呂にも入っていつものスウェット姿だ。
俺のお古だからブカブカなのは仕方ない。
……相変わらず撫で肩だなこいつは。
「わ!もしかしてそれチョコ!?」
「……ほらよ。好きなの食えよ……」
「いいの?だけど埜がもらったチョコだし悪いよ」
「……リュックにも入ってるし事務所にもあるし、一人でこんなに食えるかよ」
「そうなんだ。凄いなぁ……」
まぁ……このなかにお前からのチョコはないけどな!!
そう心のなかで突っ込んでしまう。
ため息をつきながら二階に上がろうとすると中に引き留められた。
「埜埜!こっち来て」
「あ?なんだよ」
くいくいと腕を引っ張られて、ダイニングまで案内される。
中はいそいそとキッチンへ……
「はい、俺からのバレンタイン!」
「……は?」
キッチンから中が持ってきた皿にはオムライス?がのっていた。
「ちょっと形崩れちゃったけど、これが一番いいデキなんだよね。斎さんに作り方教えてもらったんだ」
「……」
「あとはこれにソースをかけたら出来上がり!トマトソースより、デミグラスソースの方が色がバレンタインっぽいなって思って斎さんに言われて作ってみた。ほら、埜オムライス好きだろ?チョコいっぱいもらうって言ってたから、じゃぁ俺はチョコじゃないのあげようかなって」
「……へ、へぇ……」
皿にのったオムライスはふわふわではなく固そうだし端っこは少し焦げ、なかの飯も少し見えていた。
父さんが作る物とは全然違って下手くそだとひと目でわかる。中はあまり料理が得意ではない。
わかるけど、スゲー下手だけど……これヤバくね?
なにこのサプライズ。
「一番いいデキって、失敗したのか?」
「え、う、うん何回か……でもそれは母さんと斎さんに夕食に食べてもらったから。あ、もしかして外で食ってきた?」
「いや……」
「あーよかった!温めるからさ、手洗いして座ってて!一応味はちゃんとしてると思う」
中は用意をするのにキッチンへ。
俺は荷物をソファーに置きながらその姿を見守った。
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