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ルッツの気迫に呑まれ、すぐそばの部屋へと連れ込まれる。見た目通りの力で胸ぐらを掴まれたまま奥へ進んだ。
「おい…!なにす……っ」
有無を言わさず突き飛ばされ、倒れ込んだのはベッドの上だ。そしてここが誰の部屋なのか、互いに知っている。
「エリオットさまの寝室だぞ、一体何考えて…っ」
態勢を整える間も無く、ルッツが覆いかぶさるようにしてうつぶせに倒れたフィルの上に上体を倒してきた。
背後に回られ腰を片腕一つで固定される。その圧倒的な力にフィルはようやく焦り始めた。
「おま……、なにして…っ!」
突然の下半身への刺激に体が大きく跳ねる。ルッツのもう片方の手が、ズボンの上からやわやわと性器を刺激してきたのだ。
「やめ、この…変態が……っ」
「じゃあ、その変態に触られてここを硬くするヤツはなんて言うんだ?淫乱か?」
「ふざけんなよ…っ、ぁ」
ルッツの手つきはもどかしく、それでいて的確で、じわじわと性的興奮を煽ってくる。
2つの袋を手のひらで優しく揉みしだいたかと思うと、形を持ち出したそれを確かめるように先端まで撫で上げられる。
「どうしたブラッドロー。随分と可愛い声だな」
「やめろ…やめろ…っ、ふ、ンん」
突き飛ばしたくとも、大事な場所を握られているせいで思うように体が動かせない。それどころか体はみるみる火照り、下着がジワリと濡れる感触にカッと頰が熱くなる。
「なんだ、中がもうぐちゃぐちゃだ。女みたいに濡らすのはいいが、エリオットさまのベッドにその汁をこぼすなよ?」
「――っ」
ベルトを外され、あっさりと下半身をあらわにされる。外の空気に触れ、そのかすかな刺激に自身が震えたのが分かった。
ルッツの言葉でこの場所がどこなのかを思い出し、フィルは唇を噛み締めた。拳を握りしめて腹に力を入れるが、直接自身に触れられる刺激は圧倒的で、喉を仰け反らすほどだ。
「やめて、くれ…。くそ、ふざけんな、ここをどこだと…!」
「もちろん分かってる。だが、お前が我慢できればなにも問題ないはずだろう。できなければ、その無様な姿でここを汚すことになるだけだ」
「ひっ、あ!…やめっ」
敏感な先端を硬い指が這い回る。狭い入り口を引っかかれ、括れの部分を擦られ、無意識に腰が跳ねた。
「くそ、くそ…クソッタレ…っ!ぁ…やめてくれ、お願いだ…。いやだ、こんな…」
「少しはマシな言葉が言えるようになってきたな。人にものを頼むときはどう言えばいいのか分かるだろう」
「はぁ…っ、おれが、悪かったから…も、許して、ください…っ」
くちゅ、と、卑猥な音がする。今まで感じたことのない羞恥にフィルは目を閉じた。
だが、こんな見下していた相手になすすべなく無様な姿を晒していることよりも耐え難いのは、主人の部屋を自分の出したもので汚してしまうことである。
「まだ駄目だ。どう言えばいいか教えてやろうか?」
「ンんっ…」
煽るように耳元で囁かれ、その穴に舌をねじ込まれる。生暖かいものが普段は触れられない場所を犯しゾクゾクとした感覚が全身を駆け巡った。
「――――。ほら、言ってみろ」
「この…変態…っ」
「いいのか?もうパンパンに腫れて、今にも出そうだぞ」
「……っ」
ルッツの手つきはだんだんと激しいものになってくる。大きな手で自身を包み込まれ上下に扱かれるともう我慢できない。
「言う…言うから…っ!は、ぁ…おれは、主人のベッドに…お、お漏らしする…駄犬です…っ」
羞恥で頭がおかしくなりそうだった。ルッツの乾いた笑い声が聞こえて、怒りと恥ずかしさで体が震えた。
「いい子だ。従順な犬にはご褒美をあげないとな」
「あ! う、うそ…ダメ、やめろやめろやめろ……!」
低い囁き声にゾクリとしたのは一瞬で、遠慮なく自身をつかまれ激しく上下に扱かれ頭が真っ白になる。
腰を引いてもルッツにしっかり拘束されているせいで、なす術もなく快感を得ることしかできない。
もう離してもらえると思っていたフィルにとってその刺激は耐え難いものだった。腹や太腿の筋肉がビクンと跳ね、気づけばルッツの手のひらとベッドに快感の証を吐き出していた。
「はぁ…っ、うそだ、こんな…」
快感のせいでぼやける意識の中、自分が何をさせられたのかははっきり理解していた。心地よい倦怠感など一瞬で、思考は怒りに全て支配される。
「ちくしょう…お前、絶対殺してやる…っ」
噛み締めた唇の皮膚を歯が突き破り、血が滲む。振り払って、そして殴りかかろう、そう思って体に力を込めたのとルッツが動いたのは同時だった。
「――?!ぅあ、やめ…!」
達したばかりで敏感なそこを、ルッツはまた扱き出したのだ。そしてもう片方の手のひらを先端にあてがい激しく擦る。
「――っ、ぁ、」
感じたことのない激しい快感が全身を駆け巡る。意思に反して快感を与え続けられ、逃げられない感覚に恐怖心と羞恥心が混ざり合い頭がおかしくなりそうだった。
「やめろ、やめろ!い、いやだ、ぁ、なんか…くる…っ!」
何かがせり上がってくる。そう思うのと同時に、自身から透明な液体が勢いよく吹き出した。
筋肉という筋肉が強張り、感じたことのない強い快感に息が出来なくなる。ベッドと服と、そしてルッツの手を盛大に汚した後、ようやく解放された。
「随分と派手に汚したな。お前が綺麗にするんだ」
自分が出したもので汚れた手が顎を掴んで無理やり顔を上げさせられる。完全に脱力してしまったフィルはされるがままだ。
「なんだ、泣くほどよかったのか」
「……っ」
悔しくて何も言えない。生理的なものと怒りによって目からは涙が溢れていた。まだ整わない呼吸のまま、ルッツを睨みつけることしかできない。
「ちゃんと綺麗にしておけ。元の姿に戻してやってもいいと、そう俺に思わせられるようせいぜい精進するんだな」
これで終わりではないと、最後にそう伝え、ルッツは一人で部屋を出て行った。
忠誠心が気だるい体を動かし、ベッドから出る。死にたくなるほど辱められ、それでも主人の部屋を汚したままくたばるわけにはいかない。フィルは涙をぬぐい、力強い瞳でルッツが出て行った扉を睨みつけた。
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