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第4話「仲間と悪友の弟」
その後SHRが終り、そのまま担任の授業が始まった。
星夜が掛け持ちする授業は現国と古文だ。
茜雲が所属するのは普通科の1-Aクラスだ。
この学園には4つの学科が存在する。
特進科と呼ばれるエスカレートエリート系坊ちゃんが入る学科、
普通科と呼ばれる温厚的なエリート系坊ちゃん、次男、三男を始め外部入学者が入る学科
体育科と呼ばれる運動推薦を始めたとした体育会系の学科
そして
音楽科と呼ばれる芸術のエリートを育てる学科がある。だが、昔からありながらも
何故かそれはピラミッドのように成立しているのだ。
一番上が特進、そして普通科、体育科一番下が音楽科と言われているヒエルキラー。
だがそれも時代遅れだと受け止めている理事長が改革を進めているというところだ。
その中で比較的静かで温厚的なのが普通科なのだ。
(まぁ、一番妥当か。特進や体育科が生徒会の巣なら、普通科は、風紀の巣。
まぁあれの体調が整えば風紀も一気に勢力上がるから少しはましになるだろうな)
ノートを取りながら茜雲は考えた。
授業を終えた途端、次の授業まであの間茜雲はいっきにクラスメートの質問の嵐だ。
茜雲はいきなりの事に苦笑しながら一つ一つ丁寧に対応していく。
そんな親友に瑠射は適度にしなよーと声をかけながら時間割を見た瞬間
げっという顔をした。可愛い瑠射の顔が盛大に歪んだことに、勇魚は後ろから
突く様に
「どうしたんだよ、瑠射」
そう聞くと、瑠射は溜め息をつきながら
「次、あいつの授業だ。兄さんから聞いていた鬼畜英語・・・」
ぼつり呟くように言った。しかしその声は周辺の生徒に聞こえていたのか
「げ!!!次あの生徒会長お気に入りの顧問の授業!?まじかよ!」
叫ぶように言うと、全員が一斉に部屋にかかっている時計を見て急いで
各席に着き始めた。いきなりの散らばった気配に茜雲はほっとしながらも、
急な事に首をかしげていると、瑠射は
「英語とが一部の科目は特進からも来るんだよ。英語、あいつ。
宗家のぼっちゃん付き添いの一族いるでしょ?あそこから来てる。
・・・後俺と兄さんむっちゃくちゃ目つけられている」
膨れるように言うと、茜雲はなるほどという顔をしながら
「瑠射も伊利也のイギリス英語好きなんだけどな・・・ふーん・・・」
という顔をすると同時にチャイムが聞こえたので一度黙ることにした。
「・・・あのやろう」
授業を終えた茜雲は思わず素を出すような地声で言うと、瑠射は
「本当にぶっ殺したくなる・・・あいつ」
ちっと舌打ちをした。
チャイムと同時に入ってきたのが、黒のマッシュショートのヘアーをした
講師・鷲羽吉良(わしゅうきら)
宗家財閥専属の執事一族の次期当主にして現生徒会長である宗家愁獅の
専属執事だ。
中学やんちゃしていた当主の行先を心配して去年から講師に入っているらしい。
むろん既婚者だ。
だが、彼は特進以外には特に興味もないらしく、他の学科からは不評で特に
普通科でもそれは変わらなかった。
しかも新しく入ってきた茜雲の存在を知るやいなガンガン当てていくのだから
茜雲の怒りのパメラーターも限界を超えたのだ。
45分の嫌味が籠った英語を終えた後、10分休憩に再びクラスメートから
質問を食らいながら3時間目をクリアした。
それは丁度終えたときに茜雲のスマホに連絡が入った。
茜雲はスマホのスイッチを入れて確認すると”彼ら”からの連絡だった。
「茜雲ちゃん、食堂いく?」
ノートを片づけながら瑠射が言うと、茜雲は
「行くよ、瑠射。ちょぅど双子から連絡をもらったから、顔出すよ。
それとあいつの事も言っておいた方がいいからね」
苦笑しながら立ち上がったので、瑠射と勇魚はそろって顔を見ながら
首を傾げた。
食堂までの道のりを3人で歩いていると、体育学科から合流してきた
羊と合流すると同時に、食堂へ向かった。
食堂では各自が持っている生徒ICカードを当てれば自動的に買えるように
なっているのだ。
茜雲は説明を受けながらメニューを見ると大好物の麺料理があったので
迷わずそれのボタンを押した。
茜雲が選んだメニューに全員分かっていたのか、苦笑しながらも各自メニューを
注文すると、席へと向かった。
(殆ど独立した席と一部はロング机がいくつかある・・・けどあの2階の
豪華な席はなんだ・・・触れたくないけど、触れるべきなんだろうけど、
あいつにきくか)
一通り目で周りの状況見ながら羊が指定した席に茜雲は座った。
すると後ろからにぎやかな声が聞こえた。
「「茜雲ー!!!」」
ハモる声に茜雲はうどんを待っている後ろから振り向けばそっくりな
双子の友人である黒のミディアムショートである双月蘭(らん)、凛(りん)の姿。
その後ろに二人の男子生徒の姿がある。
「蘭、凛、久しぶり。というか、お前も入ってくると思わなかった。秤(しょう)」
にっこり笑いながら言うように後ろにいる黒のショートヘアモカの友人の名前
を出した。呼ばれたことにすぐ気づいた少年は
「まぁ、Mrsマダムがいるからな。というか茜雲、よく出て来れたな」
苦笑しながらいうと、茜雲は
「万全ではないですけど、まぁ叔父さんいるし対応はどうにかなりますよ。
それでそのお前が気に入ったお隣の友人はどちらさん?」
尋ねる様に大きいチェロのケースを背負った少年を尋ねた。すると、秤は
「おお、そういえば奏ちゃんは初めてだわ。えっと、こっち同じ特待生で
チェロ担当の八木奏(やぎかなで)な、んで奏ちゃんこっち、悪友の戸川茜雲」
横にいた黒のベリーショットカットウルフの少年に紹介すると、少年こと奏は
おお!という顔をしながら手を出して
「初めまして!よろしく、おいら八木奏。今年の3月までオーストラリアに
音楽留学していたんだ」
嬉しそうに笑う笑顔に茜雲は出された手に己の手を重ねると
「・・・よろしく。すごい濃いメンバーに囲まれましたね。奏」
にっこり笑う様にいうと、奏はん?と首を傾げながら
「そうか?おいら双子も秤も好きだぞ。音楽の専門知識あるしな」
言うと、茜雲はにっこり笑って
「そりゃそうですよ。肩や有名な音楽演奏家双月夫妻の息子、かたや
有能なピアニストですから。僕が知っている限りですけどね。
そういえば・・・ご飯は頼んだんですか?4人は」
尋ねる様に聞くと、奏と凛はあっ!と顔を見合わせて
「「わすれていたー!!!注文してくる!」」
慌てて注文しにいった。
二人がいなくなったところで、蘭は茜雲の肩に手を置いて
「ねぇ、秤と茜雲が知り合いなの初耳なんだけど、僕」
尋ねる様に聞くと、茜雲はお水の入ったコップを手に持ちながら
「まぁ、そりゃね。僕と秤はいろんな意味で悪友なんで。一番は秤の苗字がお母さんの苗字なんですよ。
こいつ、僕と同じでこれで5大財閥眞羅家三男坊なんで」
指指しながら言うと、羊たち三人がそろって噴出した。
蘭にいたっては、え?え?と秤と茜雲を見ている。すると秤は口を釣り上げて
「おう、天麻は母方の苗字だし。俺も望兄も実家嫌いだし、茜雲ちゃんと同じ兄貴
嫌いなんでな?そういう意味で仲いいけど、お前らとも以前から顔見知りだぞ?
まぁ俺は素顔だしてねぇからしらねぇけどな?『approach』の皆さん?といえば
お分かりか?」
説明しながらも最後はちょっと声を変えた。その声に全員聞き覚えがあったので
え?と茜雲を見ながら秤を指さすと、茜雲は
「こいつ、天麻秤(てんましょう)は、眞羅秤(しんらしょう)が本名です。
ついでにいうと去年まで僕達が遊んでいた族のグループへ情報を流していた情報屋No1『Libra』です。ついでにこいつLieの一番弟子なんで下手な事言うと笑えない事になるで注意してくださいね。まぁ、彼のお蔭でこの学園は、Lieが認める情報屋五人衆全員がいる状態なのでいつでもあいつに情報筒抜けなんで
気を付けてくださいね」
苦笑しながら言うと勇魚は
「それであいつがいんのかよーーーー!」
思い出す様にいうと、茜雲はようやく来たうどんを受けながら
「彼は情報屋とお前の監視の為におばあさんから送り込まれていますからね。ある意味長男はすでに下見準備で中等部から入ってますけど」
テーブルに置くと目の前にあるお箸を取っていただきますをした。
相変わらずマイペースの茜雲だったが、一つ思い出す様に秤の方を向くと
「蘭、秤、凛には後で言っておいて。八木奏に手を出すものが居たら情報屋の情報使ってでも把握しておいて。彼、あいつの弟だから。僕のもう一人の悪友である八木深紅(やぎしんく)の実弟だから」
説明するように言うと、全員がそろってえ?という顔をした。
秤もえ?まじかよ?という顔をすると茜雲は
「あいつも僕と同じで祖母に似ちゃった奴なんですよ。だけどちゃんと実の兄弟なんで、護衛はお前らにかかっているからね」
そういうと秤ははぁ~と溜息を付きながら凛とメニューを待っている奏を見ながら
「・・・まぁ、いいよ。奏ちゃん大事だし。取り敢えずご命令は受けたよ。
Aquarius(アクエリアス)」
そういうと茜雲はにっこり笑いながら
「・・・Lieが見たら喜ぶ奴ですよ・・・今のお前」
手に取ったお箸でうどんを食べようとした。
再び食堂が騒がしくなると同時に、誰かがやってきた。
「あ、水無くなった。羊入れてくるよ」
瑠射は空になった水のコップに気づいてそう言うと、羊は少し心配そうな
顔をしながら
「俺も水すくねぇから行くわ。茜雲、ちょい水入れてくる
・・・生徒会軍団来たぞ」
ぼつりそういうとそのまま瑠射と一緒に水を入れに言った。
羊が告げた言葉に茜雲と秤の顔は露骨に嫌な顔になる。
それを見た勇魚と蘭はそろって苦笑しながらも
「「本当に兄貴嫌いだな、二人共」」
言ったのは言う間もない。
生徒会役員が全員昼飯を一緒にしに来た。
それは茜雲にとって数年来ぶりにある実の兄である
水波慧(みずなみけい)と会う事になるのであった。
また秤も中学に出て行って以来会っていない兄である
眞羅英知(しんらえいち)に会う事にもなるのだ。
二人は出来るだけ端っこの席を選んでいたので、まず会う事は
ないだろうと思っていた。
思っていたのだが・・・
現実はそう甘くなかった。
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