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第6話「生徒会と風紀委員会②」

羊のどなり声が聞こえると同時に茜雲は、はっとして立ち上がるが、秤がストップを かけるように手を前に出している。今ここで茜雲が出てこれば色々ややこしくなる。 まだ必要な駒があと”一人”足りないのだ。だからここは耐えるしかない。 その目に茜雲は、溜め息をつきながらはぁーというと、生徒会役員も 焦ったような声が聞こえている。 「・・・ちっ、羊のやろう。バカに突っかかりやがって」 明らかに自身の兄である英知や可仁と何か言い合っている。しかしここで顔を出す訳には 行かず舌打ちをしていたその矢先だった。 「おぃ、風紀委員会が来たぞ!風紀委員長だ!」 普通科の生徒の声を同時に生徒会役員が全員があー・・・という顔をしている。 どうやら風紀委員長が来る前にどうにかしたかったんだろう。 だが、それは今までなら出来た。 しかし茜雲が来た以上それはまず無理な話だ。 何せ、親友である瑠射の危機なのだ。それに彼は干渉する事は許される。 何せ・・・ 「それで草薙書記は我が弟になんの御用だ?」 黒髪のリゾットブームショートそしてエメラルドグリーンの瞳。 さらに平和と中立の意味を兼ねた白い制服を羽織っている彼こそ 普通科と音楽科にとっての味方である「風紀委員会」だ。 そのトップに降臨している人物は風道伊利也(ふうどういりや) 茜雲の親友である瑠射と正真正銘の血のつながった兄でもある。 その声に、草薙はもちろんだが、近くにいた二人も色々言っているが伊利也は聞く耳を持たない。 「文句言う前にそっちの犬を監視しておけ、慧。きさまの家の違って内は、仲がいいんだ。瑠射に何かあればお家問題につながるぞ。それとお前の執事呼びだしたからな。 この先一切瑠射と羊の周辺の者に関わるな。関わる時点で殺す」 ドスの聞いた声に、生徒会役員は全員黙るだけでなく周辺が黙る。だがそれも関係なしに伊利也は 「瑠射、彼らが待っているんだろう?行きなさい。八木君達も巻き添えさせて済まないな」 言うとそのまま奏が瑠射の手を掴んで頭を下げたのでそのままこっちへ向かっている。 「・・・茜雲ちゃん、隠しマイクでもあるのかよ」 明らかに会話を盗み聞きしたであろう茜雲に尋ねた秤だが茜雲は何も言わずにうどんを食べている。 こうなったら何も答えないのが目の前の男だということを秤は3年間の付き合いで知っていた。だからこそあまり追及はしない。 (本当に腹の底で何を考えているやらわかんねぇのが茜雲ちゃんだな) そういいながら戻ってきた奏達を迎え入れた。 茜雲は2階席に移った兄をちらみした。 己と同じアクアブルーで同性でありながら”無毒”で生まれた片割れをずっと妬み、羨ましくて、同時にどうして彼にはそれが無いんだろうと思っていた。だが今となればもうそれもどうでもいい。 茜雲には”戸川”がある。 何をしても全部助けて支えてくれる”戸川”がいるのだ。 「・・・さて、僕用事あるんですけど、勇魚終わったなら付き合って」 綺麗に食べきったうどんの器にお箸を並べておくと、勇魚は 「いいぞ。どこ?」 尋ねると茜雲はにっこり笑って 「風紀委員会。くそ連中にバレる前に接したいんでね。 お前の義兄でもある委員長に」 そういうと勇魚はあーと言いながら頷くと器を片づけようと手を伸ばす。しかし、蘭が勇魚の手を掴んで 「俺が代わりに片づけるから行きなよ。早乙女に会いたくないんでしょう?」 そういうと茜雲と勇魚の分の器を自分に引き寄せた。 蘭の好意を素直に受けた二人は、人混みをうまく利用しながら食堂を抜けるとそのまま風紀委員会室へ向かった。 先ほど委員長が簡単な物を注文してまた食堂を後にしたので、今のタイミングなら彼が風紀委員会室にいるのだ。 廊下を歩きながら茜雲は先ほど食堂出るときに見えた事を思い出した。 恐らく黒髪のニュアンスパーマショートの男子高校生が目を見開いていたのだ。 茜雲は機嫌が悪くなるのは分かっていたので、あえて告げることにした。 「・・・取りあえず風紀委員会室ついたら部屋戻っていいよ。勇魚 多分だけど早乙女先輩?らしき黒髪の人がお前に気づいていた」 そういうと勇魚ははぁ!?という声をあげると同時に舌打ちをして 「・・・後で稀叉に八つ当たりしてやる」 ぼつり呟くように言うと、二人で風紀委員会室へと向かった。

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