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第8話「新入生歓迎会~前日~」

茜雲が風紀委員会室へ行ってから1週間後。 HRにて担任である北極から告げられた最初の行事が「新入生歓迎会」だ。 それは普通にいえば新一年生と仲良くなりましょうという会だが、茜雲にはそれをやる意味が解らなかった。しかし、郷に入っては郷に従えというので、素直に従う。 ペアはランダムになっており、今年は何故か鬼ごっこだそうだ。 因みに去年は借り物競争となっていて、ペアをわずかなヒントから見つけるというよく分からない状況だったそうだ。 その所為で去年は、風紀委員会はもう過労レベルで摘発が上がったらしく、今年もそれに近い形で鬼ごっこになったそうだ。 「じゃぁルールを説明するな?新入生歓迎会は今年は『鬼ごっこ』だ。 この後渡されたぺアの紙を渡すが、当日そのペアをホイッスルが鳴れば探す。そして見つけたら、今度ペアで3問解いていくという奴だ。中には体力系もあるからペアをうまく使いこなす事も大事だ。・・・なので頑張ってペアの先輩と仲良くやれよ・・・頼むから」 説明しながら溜め息をつく北極に、生徒たちもそろってはーいとめんどくさそうに返事をした。その後、クラス委員長によって各ペアの書いた紙を渡されたが、北極は 「相手は当日まで誰にも言うなよ?あと誰か黄色の紙取った奴いたら知らせろ。風紀副委員長とペアだそうだ」 誰?誰?というクラスに釘刺す様に言うと同時に黄色い紙の事を告げた。 普通科の生徒が今年は多い為に人数の関係で一人余るそうだ。 すると「あ」という声と同時に瑠射が手を上げて 「・・・僕です」 黄色い紙を見せると、北極は分かったというと 「まぁ副委員長ならお前の兄貴も安心するだろうし、明日までは同室者でも言った時点でマイナスポイントだからな」 そういうとHRの終了を告げた。 HRが終了すればそこからは各自自由タイムとなるので勇魚はよいしょっと立ち上がると 「いってらっしゃい。弓道場お気に入りだね」 茜雲が言うと、勇魚は 「まぁ、弓道だけは爺さんとの繋がりのものだからな」 そういうとそのまま鞄を背負っていった。反対側の席で瑠射は数名のクラスメートと囲まれている。 そして茜雲はちらっとペアを見て溜息をついた。 (まさかの草薙とは・・・まぁ、いいか。あれでもNO2だったし、足は引っ張らないだろうな) そう言いながらペアの紙にかかれている名前を見た。 出来れば瑠射の目には見せたくないので、そのまま素直に鞄に入れると 「瑠射、そういえば今日壱架と見学予定じゃなかったの?」 尋ねるように聞くと、瑠射の後ろに待ちくたびれたような顔をしているラフマッシュショートの金雀色をした少年が綺麗な緑色の目を 大きく見開きながらじっと見ていた。そんな彼にさすがの瑠射も慌てる様に 「ご、ごめん!いっちゃん!今から行くから待って!茜雲ちゃんはどうするの?」 尋ねると、茜雲は 「ん?もうちょっとしたら羊が来るから待っておく」 そう言うと本を置いて言うと瑠射はそうかという顔をするとクラスメートたちもカバンを持ってそれぞれの放課後へと向かった。 茜雲は取りあえず貰っていた報告書をデーター化した情報を見ようとスマホを開けると ”戸崎” 「・・・あいつ・・・明日本当に来れるの」 スマホのメールに入っていた名前を見て、茜雲は急いでメールを開ければ彼の師匠からだった。編入試験はぎりぎりラインで合格したので明日に間に合う事、あと、紹介は理事長が直実するそうだ。 「・・・叔父さん遊んでるな。まあこれで駒は揃ったな。さぁ、どうするかな・・・副理事長の調査はまだ時間いるしな・・・だけど異端児と番犬ならすぐ調べられそうなんだけどな・・・」 確実に葦谷は揃うであろう最後の駒の存在に茜雲は 「楽しみだな~はは、まぁ、驚くだろうな?唯一関係ない新堂が一番最大のミスを犯しているんだからな?」 そう言うとそのままメールを返信した。 『とっとはやく来い。』 たった一言の文章だけど、それで伝わるだろう。 取りあえず明日は”礼儀がいい理事長の甥っ子”を演じておこう。 そう思っていると、そこへ羊が教室の扉を開けて 「茜雲、お疲れ様。ちょっと聞いてくれ。秤から笑えない情報が来たぞ。まさかの眞羅のペアが八木の弟だ」 真顔で言うと、茜雲はうわあーという顔をすると 「・・・あ、眞羅先輩ご終身様だな。あの八木が来たら一生目につけられるぞ?」 そう告げると羊は 「明日は嵐が吹き荒れるぞ?・・・奏っていまだに実家の状況の原因を知らないんだよな?」 尋ねると茜雲は 「分からない様にあいつとあいつ親父が手を回したからな。まぁ、現実はいずれ教えるべきというのが僕の主義だから、今回で嫌でも知るだろうな?実の兄が地獄の底から”新堂”を嫌っているってことをな。奏も嫌でも 知るさ、金持ちの本性ってものをな。まぁミセスマダムはあらゆる試練を与える人だ。 奏もまさか音楽以外でも厳しい人だとは思っていないだろうけど、あの人はあらゆる面で鍛え上げる人だからな。3年入ればいやでも別人になる」 苦笑しながら言うと、羊はそうかーという顔をしながらいった。すると茜雲は 「まあ、お前はましだろう?」 尋ねる様に聞いた。すると羊は 「あ・・・まぁ・・・ましなのはましだ。・・・ただお前の兄貴だけどな?」 そう告げると、茜雲は 「・・・あれ体力がろくにないから役に立たないから頭使わせる以外はお前が引っ張っていけよ?」 釘刺す様に言うと羊は頷いて 「よーくわかった。OK、頭にぶちこんだ。本当にお前の兄貴なんであんな能天気なんだよ・・・」 溜息を付きながら頭を手に置いて言う。すると茜雲は 「・・・あれと一応半分血はあるけど未だに不思議だよ」 呆れるように言った。そんな友人の顔を見てあきらめがついたのか、羊は 「取りあえず部屋帰ろう。資料纏めるだろ?」 そう告げると、茜雲は立ち上がって鞄を手に取ると 「・・・そうだね。後、明日あいつが来る。おじさんの紹介で発覚するからそれまでは情報操作は頼んでいるからな」 そう告げると、茜雲は鞄を持って歩き出したので羊も素直に後をついていった。 明日は波乱万丈の新入生歓迎会の始まりだ。

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