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第3話
保育園から車で20分の所にある、小さな工場が晴の勤め先だ。従業員は数十名で年上の人達ばかり。
その為か、晴はみんなに可愛がってもらっていた。
「おはよーございます」
「晴ちゃんおはよー」
「奏多くんはちゃんと保育園行った?」
「あいつ女好きだから喜んで行ってますよ」
タイムカードを押して自分のデスクに荷物を置き、仕事の支度をしながら先に出社していたおじさんおばさんにいつもの返事をした。
「そうだ晴ちゃん!これ少しだけど夕飯の足しにしてよ」
「あー、本当いつもすみません。助かります」
晴に話しかけてきた年配のおばさんから受け取ったビニール袋の中には、小分けにされたおかずの入った袋が3つほどあった。
男手一人、仕事をしながら子供を育てるのは大変だろう。
晴の体と奏多の体を心配して、支えてくれるいい人達に恵まれていた。
26歳の晴は、バツイチ子持ちのシングルファーザーだ。
数年付き合っていた同い年の女性とできちゃった結婚で授かった奏多。互いに結婚を意識していたせいか、結婚生活は順調だった。
だが、1年が過ぎた頃になると些細な喧嘩が増えていき、お互いがうんざりしているのが目に見えて分かるようになると、熱が醒めていく実感に2人の未来は見えなくなっていた。
それから離婚の決断を出すのにそう時間は要らなかった。
奏多の親権問題で多少は揉めたが、頑なに譲ろうとしない晴に根気負けした彼女は1人家を出ていったのだ。
彼女が居なくなり、何もかもを1人でやるようになった当初は、それはもう家の中が酷い状況で、1人苛立つことも多かったが今は嘘のように家は綺麗なり、心も平穏。
共々器用だった晴は家事全般はそれなりに出来たし、離婚したことを悔いてはいなかった。
まだ若いこともあり、再婚しないのかとよく言われるが、晴はもう結婚はしたくないと随分冷めているようだった。
誰かに心を乱されるくらいなら大変でも1人、奏多と一緒にいた方が楽だと公言していた。
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