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第7話

「番号変わってなかったのな!いやー何年ぶり?」 「お前は相変わらずだな、俊貴」 「ああ!思い出してくれた!」 柔らかくなった晴の声質に嬉しそうに声を弾ませた俊貴。懐かしい名前の呼び合いに自然と笑顔になる。 晴はソファーから起き上がり、背もたれに頭を預け、懐かしむように目を閉じた。 「お前は番号変わっちゃったの?」 「はは、まあ色々ありまして…」 「あっそ」 「聞いといて冷たっ!てか本当懐かしいな」 当時のやり取りを思い出すような会話に自然と笑いがこぼれる。 「高校卒業して2、3回遊んだっきりだもんな」 「晴が平気なら今から出てこねぇ?」 「友達はいいのかよ」 「いい!いい!晴の方が全然いい!」 「調子いい奴。でも悪い。せっかくだけど明日も仕事だから」 離婚する前の晴だったら飲みの誘いならすぐにのっていただろうが、昔と今とは違う。 自由に身軽に行動できない今の状況が正直、もどかしいと思うことも多々ある。だがそれは身勝手なエゴ。 慣れた断り文句に、俊貴との会話もこれで終わりだと思った瞬間。 「そっか。じゃあさ、いつ会える?」 「え?」 「久しぶりに会おうぜ!積もる話しようぜ!」 「あー…」 改めての誘いに拍子抜けな声が出てしまった。 ウキウキした様子の俊貴にまた笑みがこぼれたが、奏多の顔がチラつき答えに困ってしまった。 「なんかマズイ?」 「いや。今週末俺の家でもいいってんなら大丈夫」 外で絶対会わなきゃいけないって事でもない。 家ならば奏多も安心だし晴も落ち着いていられる。 「じゃあ決まりな!」 「住所後で送っとく」 「わかった。じゃあ週末」 「ああ、じゃあ」 晴の提案に1つ返事で俊貴は答え、週末晴の家で久しぶりに会う約束をした。 「少し掃除しないとマズいな…」 離婚した当初に比べたら全然綺麗になったリビングだが、部屋の隅っこに置きっ放しの着替えや漫画本。ダイニングテーブルにも荷物がごちゃっと乗っかっている。 ぐるりとリビングを見渡した晴は溜息をついた。

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