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第10話
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「……よし、魔力も充分補給したしそろそろ行くか」
「ま、待て……。ちょっとすぐには無理……」
何事もなかったかのようにベッドからスッと立ちあがるプルルを、ベッドにへたり込んだまま呼び止めた。
正直、何度も突っ込まれて立つどころか座ることすらままならない状態だ。
一方のプルルは肌のツヤまで増したように元気で、上機嫌だ。
これではどっちが魔力供給されたか分からない。
「ユウ、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃねぇ……、とりあえずケツだけでも洗い流したい……」
できることなら一連の嫌な記憶もきれいさっぱり洗い流したいくらいだ。
「それなら心配ない」
そう言ってプルルが指をパチンと弾くと、俺はファンシーな煙に包まれた。
そして煙が霧散した時には、体は少女のものになり、体も服も何事もなかったかのようにきれいになっていた。
うわぁ~~! ファンタジー!
「……って、いやいやいや! 何誤魔化そうとしてんだ! 服と体がきれいになったからって消えないものもあるからな!」
「そうだな、ユウが私ものだという所有印はそう簡単に消えないな」
嬉しそうに言って、スッと鎖骨部分をプルルが指でなぞる。
見ると生々しいキスマークがしっかり刻まれていた。
「ぎゃー! なんで残ってるんだよ! これこそ魔法で消しとけよ!」
キスマークつけて魔王退治って、倒される魔王の身にもなってみろ!
「だめだ。これは初めて私たちの体と想いが繋がった大事な記念だ。……これからもたくさん増やしていこう」
「なに二人の思い出をいっぱい作ろう的ないいセリフ風に言ってんだよ! 俺からしたら強姦された忌まわしい傷のようなもんだからな!」
もうそれはトラウマレベルというくらい。
「でも、最後の方はユウも積極的だったじゃないか。……素直なユウ、可愛かった」
「言ーうーなー!!」
ぎゅっと抱きしめられ、ぎゃあぎゃあと叫んで抵抗するががっちりホールドされてビクともしない。
「というか、リオンのところに早く行かないと! そして魔力供給しないと!」
そのために色々大事なものを失ってまでここまでやってきたんだ!
「ああ、そういえばそういう名目だったな。……仕方ない。行くか」
面倒臭そうに言って、プルルが立ち上がった。
そしてポンっと音がして煙が立つと、そこにはマスコット姿のプルルが宙に浮いていた。
「それじゃあ今からリオンのところまで連れて行くプル~!」
「白々しい! かわい子ぶってももう可愛いと思えねぇよ! むしろ怖いわ!」
「プル~?」
つぶらな瞳でプルルが首をかしげる。
あまりにもベッドの上とのギャップが激しすぎてまさか二重人格じゃ……と疑うほどだ。
「……まぁもういいや。ツッコむの面倒臭い……。なんでもいいから早くリオンのところに連れて行ってくれ……」
「了解プル~!」
そう言ってプルルが手を掴むと、白い光が俺たちを包んだ。
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