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第29話
気のせいだろうか………?
あの真木が笑って『サンキュ兄ちゃん』
そう言った気がするのだが………。
玲は幻ではなかろうかと思うほどめったに見られない光景に今にも昇天してしまいそうなほど舞い上がっていた。
そんな浮かれた玲を現実に引き戻す一言が降ってくる。
「ねぇ玲聞いた?」
篝が玲の座る席へ来て机に手を着いて聞いてきた。
「あの3年生等の処分停学1ヶ月だって。」
「は?退学の間違いじゃねぇの?」
しかも何だ?真木と同じ処分ではないか。
……そう、真木は一連の事件で停学処分を受けたのだ。
だが玲はこの処分に納得出来ていない。
そもそも真木は被害者だ。
なのにこの仕打ちは酷すぎるのではと思っている所にこれだ。
「どうやらあの三年の中に親が弁護士ってのがいたみたいだよ。」
「その弁護士の息子がこれかよ。
世も末だな。」
篝の話を聞き静かに椅子から立ち上がり教室を出た。
「玲何処行くの?」
「職員室。」
気にくわない。
あいつ等が真木に手を出した上こんな軽い処分だとか許さない。
玲は職員室へと向かった。
トントンと職員室のドアをノックしガラガラと扉を開る。
「失礼します。」
そう言って真木の担任の所へ向かった。
「すみません先生。
僕は遠矢真木の兄、遠矢玲といいます。
弟の事でお話があります。」
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