53 / 194
第53話
小さい頃は兄が大好きでいつも後ろをくっついてた。
兄がいないと寂しくて泣いたりもして。
だけど小学生になると母は成績の事ばかり。
兄は常に満点を取るから褒められる事しかないが弟の自分は例えいい点数であっても叱られる。
高学年になる頃には段々授業についていけなくなって塾まで通ったがそれが苦痛で仕方なかった。
だから頭のいい兄が羨ましくて憎くて、
嫉妬した………。
兄が勉強を教えてくれると言っても
素直じゃないし悔しかったから意地でも断った。
中学に上がる頃にはもう成績の事は諦めてた。
だっていくら頑張っても兄には勝てないし親に誉めてもらえる事もない。
そして学校で出会った友達に勧められて耳にピアスの穴を開けたり髪を茶髪に染めてみたりして正直楽しかった。
勿論親には相当怒られ、呆れられて、
だけど兄だけは庇ってくれて味方になってくれた。
『真木らしくていいんじゃない』と。
そう言われて嬉しかったのと同時に何故そんなに大切に想ってくれるのか理解できなかった。
親ですら見放したのに兄は真木が悪態ついても尚大好きだと言ってくれる。
どうしても解せなかった……。
今思えばその頃は既に真木を恋愛対象として見てたのかもしれないが大体何故自分なのか?
普通兄弟に恋愛感情持ったりしない。
ましてや男同士だ。
「はぁ……帰ろ。」
勉強を放り投げて外へ出てきた真木だが
そろそろ帰らないと玲にも怒られそうだからと
家の方角へ足を向けたのだが。
「おいコラ!!何勝手に帰ろうとしてんだ!!」
振り向くと先ほど絡んできた男二人のうちの一人が殴りかかってきた。
「ぐはっ……。」
しかし地面に倒れたのは男の方で
真木が男の腹へ拳をめり込ませたのだ。
「うっせぇ俺に触んなっつってんだろ!!」
勉強は駄目だが身体を動かすのは好きだ。
不良仲間とつるんでいたから自然と喧嘩は得意になっていた。
ともだちにシェアしよう!