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第54話
家に着き恐る恐る玄関のドアを開けると
目の前には母が立っていた。
「…………。」
「何か言うことはないの?」
「……ただいま。」
怒っている母に悪態をつくと彼女の顔がより険しくなった。
「ただいまじゃないでしょ。
何処行ってたの。
夏休みは遊びには行かせないって言ったわよね?」
「ああ、もううるせぇ。
放っとけよ俺なんて。」
「そうはいかないわよ。
あんたがこうだと親戚にも会わせる顔がないわ。」
ああ、そうか……。
結局息子の気持ちより世間体ってことか。
「母さんもうその辺にしてやって。
真木だって勉強詰めじゃ息が詰まる。」
玲が必死で真木を擁護してくれてるけど
母も中々折れない。
「貴方は黙ってて。
大体普通に勉強してたら赤点なんて取らないでしょ。
また変な友達作って遊んでばかり、
なんでこうなっちゃったのかしらね。
玲は真面目な子に育ったのに。」
黙って聞いていた真木は胸の中に溜まる黒い渦がどんどん大きくなるのを感じた。
友達を否定され、自分を否定される。
「………い。」
「え?何?言いたいことがあるならはっきり言いなさい!!」
「うるさいっつってんだよ!!
これ以上俺に勉強の事で干渉すんな。
兄ちゃんと俺は違う。比べんな!!」
「真木!!」
玲の大きな声にはっとした。
気がついたら玲が真木の振り上げられた腕を掴んでいる。
そう、真木はいつの間にか母を殴ろうとしていたのだ。
「はぁ……はぁ……お、俺……。
……!?」
すると玲はいきなりぎゅっと抱き締めてきて大丈夫と息の荒い真木を落ち着かせる。
そして真木が落ち着くと母の方を向いた。
「母さんもういいだろ……。」
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